玄米一粒中に分布する内部成分の3次元計測法

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要約

1)対象試料の連続切片を作成、2)切片上の成分の染色、3)コンピュータ内の仮想空間上での3次元再構成により、玄米中のタンパク質、デンプン、脂質等の3次元分布を可視化することができる。

  • 担当:食品総合研究所・食品工学部・計測工学研究室,流通保全部・放射線利用研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8047
  • 部会名:食品
  • 専門:食品品質
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景

従来の食品成分の分析は、例えば米の場合、米粒全体を化学的に分析することで行われてきた。しかしながら、食味などを詳細に評価する場合、全体の分析値に加えて一粒内部での特定のタンパク質や脂質などの分布、特に立体分布が重要になる。そこで本研究では、玄米一粒中の成分の3次元分布状態を明らかにする計測法を開発した。

成果の内容・特徴

本研究は、(1)ミクロンオーダーの厚さの切片を耐薬品特性のある粘着テープ上に貼り付けて連続して回収する操作(切片化)、(2)染色によって切片上の目的成分を可視化し、デジタル画像として順次コンピュータに記録する操作(染色およびデジタル画像化)、(3)記録された各切片画像の位置関係を補正し、コンピュータ上で重ね合わせることにより仮想的に3次元再構成する操作(3次元再構成)、の3操作を組み合わせたことに特徴がある(図1)。

  • 試料(玄米:日本晴)とともに位置合わせ用の標識(棒状の物質:ソーメン)を包埋剤(パラフィン)に埋め込んで切片化し、粘着テープ上に連続して回収した(図2)。
  • 各種の染色法を適用して切片上での成分の分布状態を可視化し、実体顕微鏡に装着したCCDカメラによりデジタル画像として順次記録した(タンパク質の染色にはCBB溶液:青色、デンプンにはヨウ素溶液:茶色、脂質にはスダンブラック溶液:黒色、を適用した)。
  • 記録された各切片のデジタル画像を、位置合わせ用の標識を参照してコンピュータ内で重ね合わせ、ボリュームレンダリング法を適用して各成分の3次元的な分布状態を表示した。
  • 玄米中において、タンパク質および脂質は胚と外周部に多く、デンプンは胚乳内部に分布することが表示された(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 染色、比色などで可視化可能な成分であれば3次元計測できる。
  • 米に限らず、他の穀類等への適用が可能である。
  • 対象試料を破壊するので、同一試料に対する経時的な変化は観察できない。
  • 液状成分を含有するような多水分試料に対しては適用できない。
  • 吸水等によって切片形状が変化する試料に対しては適用できない。

具体的データ

図1 3次元計測法の概要図

その他

  • 研究課題名:3次元バーチャルプロットによる生体内化学物質表示法の開発
  • 予算区分:科学技術特別研究員、特研(新食味)
  • 研究期間:平成12年度(平成11~13年)
  • 研究担当者:小川幸春,大谷敏郎,?原昌司,杉山純一
  • 発表論文等:1)Ogawa Y., et al. : Development of visualization technique for three-dimensional distribution of protein and starch in a brown rice grain using sequential stained sections, Food Sci. Technol. Res., 6(3), 176-178 (2000)
                      2)Ogawa Y., et al. : Advanced technique for three-dimensional visualization of compound distributions in a rice kernel, J. Agri. Food Chem.,49(2), 736-740 (2001)