麹菌発現遺伝子の塩基配列の解析

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要約

麹菌 cDNAクローンの5'末端近傍の塩基配列(5'EST)を網羅的に解析し、高温培養条件下での遺伝子発現情報を解明するとともに、未知遺伝子の存在を明かにした。

  • 担当:食品総合研究所・応用微生物部・糸状菌研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8077
  • 部会名:食品
  • 専門:バイテク
  • 対象:微生物
  • 分類:研究

背景

麹菌Aspergillus oryzaeは,味噌,醤油,清酒などの醸造に用いられるとともに,種々の酵素の生産に使用されるなど産業上重要な糸状菌である。麹菌については,すでに有用な菌株の選抜育種や利用技術などの実用的な研究開発が進んでいるが、さらに麹菌の研究を展開させるためには,新規酵素・遺伝子の探索・解析およびその機能の解明などの基礎的研究が必要である。一方海外においても、産業的な観点から、酵素生産菌である麹菌に対する注目が集まっており、この遺伝情報の解析に関する研究は緊急を要する問題である。
本研究では、麹菌のcDNAライブラリーを作製し、各cDNAクローンの5'末端近傍の塩基配列(5'EST)を網羅的に解析し遺伝子発現情報を取得するとともに、有用な遺伝子を取得することをねらいとした。

成果の内容・特徴

  • 醸造用麹菌の親株であるAspergillus oryzae RIB40株をYPD液体培地にて37°C及び42°Cの異なる温度条件における培養を行い、抽出したmRNAからcDNAを合成した。得られたcDNAを5'→3'方向にベクターに組込み、cDNAライブラリーを作製した。得られたcDNAライブラリーの挿入DNA断片のサイズは数百bpから数kbにおよぶものであった(図1)。
  • 37°CにおけるcDNAライブラリーについて約3,000クローン、42°CにおけるcDNAライブラリーについて約1,000クローンの5'ESTを決定した。公共DNAデータベースとの比較の結果、決定されたcDNAクローンはデータベース上の既知遺伝子と何らかの相同性を示すものが約半数をしめたが、全く相同性を示さない未知遺伝子が存在することが判明した(表1)。

成果の活用面・留意点

本研究によって得られた麹菌cDNAクローンは、生育中に実際に発現している遺伝子であるため、麹菌の遺伝的研究における遺伝子マーカー等としての利用方法が考えられる。

具体的データ

図1 麹菌cDNAクローンの制限酵素切断産物

その他

  • 研究課題名:麹菌の遺伝子発現データベースの構築と遺伝子構造の解析
  • 予算区分:パイオニア特別研究
  • 研究期間:平成12年度(平成11~13年)
  • 研究担当者:柏木豊,鈴木聡
  • 発表論文等:S. Sizuki and Y. Kashiwagi: Characterization of several genes from cDNA library of Aspergillus oryzae RIB40, Proceedings of International Symposium on Moleculer Biology of Filamentous Fungi, Aspergilli, Tokyo, p.52(2000)