α-ガラクトシダーゼの基質認識機構

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要約

イネのα-ガラクトシダーゼの結晶化に成功し、X線結晶構造解析が進行中である。この酵素はガラクトマンナンに効率的に作用した。また、好熱菌Thermus T2のα-ガラクトシダーゼの遺伝子をクローニングし、大腸菌で発現させた。本酵素中に1残基存在するCysは活性と関わらない。

  • 担当:食品総合研究所・生物機能開発部・分子情報解析研究室
  • 代表連絡先:0298-38-8063
  • 部会名:食品
  • 専門:バイテク
  • 対象:稲類
  • 分類:研究

背景

α-ガラクトシダーゼは糖脂質、多糖、オリゴ糖からガラクトースを遊離するエキソ型の酵素である。植物種子においては発芽時のエネルギー獲得のために、また動物においては糖脂質の代謝などの役割を担っている。また、微生物由来の酵素は精糖工程において利用されているため、工業的にも重要な酵素である。α-ガラクトシダーゼは真核生物由来のファミリー27に属する酵素と、原核生物由来のファミリー36に属する酵素が存在するが、両ファミリー間の酵素には一次構造上の相同性は認められない。α-ガラクトシダーゼの高次構造は不明であり、触媒残基や基質結合部位についても殆ど情報がない。本研究では性質の異なるα-ガラクトシダーゼの構造と機能の相関を解明するために、イネα-ガラクトシダーゼ(ファミリー27)単結晶のX線結晶解析と、原核生物由来のα-ガラクトシダーゼ(ファミリー36)のCysをAlaに変換した変異体の構築による影響について検討を加えた。

成果の内容・特徴

  • イネα-ガラクトシダーゼのX線結晶解析の結果、表1に示したように2.5Åの解像度でnative dataを得た。
  • イネα-ガラクトシダーゼは、効率的にガラクトマンナンに作用する(図1)。
  • Thermus T2のα-ガラクトシダーゼ遺伝子をクローニングし、塩基配列を決定した。本酵素は、SDS-PAGEで53 kDa、native PAGEでは400 kDa以上であり、8量体構造をとっている(図2)。また、本酵素中には1残基しかCysは存在せず、この残基とpCMBが反応することにより活性が失われる。このCysをAlaに置換した変異体を構築した。CysのAlaへの変換は活性へ影響せず、このCysは活性とは関わらない(図3)。

成果の活用面・留意点

ガラクトマンナンに作用する酵素は少なく、イネα-ガラクトシダーゼの立体構造が解明されれば、効果的にガラクトマンナンに作用できる酵素の構築が可能となり、食品素材の高品質化に貢献する。

具体的データ

表1 イネα-ガラクトシダーゼの結晶の特性

その他

  • 研究課題名:α-ガラクトシダーゼの基質認識機構の解明
  • 予算区分:バイテク(糖質工学)
  • 研究期間:平成12年度(平成8~12年)
  • 研究担当者:小林秀行
  • 発表論文等:1) Ishiguro, M., Kaneko, S., Sakakibara, Y., Koyama, Y., Kusakabe, I., Kobayashi, H.: Purification and characterization of recombinant Thermus sp. strain T2α-galactosidase expressed in Esherichia coli, Appl. Environ. Microbiol., 67(4), 1601-1606(2001)
                      2) Kobayashi, O., Kusakabe, I., Kobayashi, H.: (2000.9, Hamburg) 20th International carbohydrate symposium(2000.9,Hamburg)