ブルーベリー培養細胞によるアントシアニン色素の生産

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要約

樹立したブルーベリー培養細胞株は、果実と同等量の高いアントシアニン生産量を示し、15種類以上の配糖体が含まれる。さらに果実では少ないフラボノール類とプロアントシアニジンも生産している。

  • 担当:食品総合研究所・生物機能開発部・細胞機能研究室部
  • 代表連絡先:0298-38-8050
  • 部会名:食品
  • 専門:バイテク
  • 対象:他の果樹類
  • 分類:研究

背景

植物の天然色素は、食品産業等で広く利用されており、近年は色素の持つ機能性についての関心も高まっている。しかし色素原料のほとんどは輸入に頼っており、価格や製品の品質の安定性が低い。視力改善効果などの機能性が知られているブルーベリーのアントシアニン色素の効率的な生産を目標として、アントシアニン色素の高生産株の確立と生産色素の分析を行った。

成果の内容・特徴

  • 葉組織より誘導したカルスから赤色の細胞群を分離・選抜し、生育速度が早く、果実と同程度のアントシアニン色素を生産する細胞株を確立した(表1)。ブルーベリー果実は着色料の原料になることから、この培養細胞の色素生産量は特に高いと言える。
  • アントシアニンの成分は果実に含まれるものと同じであり、15成分以上を含む(図1)。これらはシアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペオニジン、ペツニジンの各アグリコンにグルコース、ガラクトース、アラビノースがそれぞれ1つ結合した3位配糖体である。培養細胞色素には、シアニジン配糖体(ピーク3, 5, 7 )が8割以上含まれている。
  • アントシアニン色素以外にもフラボノール類およびプロアントシアニジンを生産しており、フラボノール(図2)は主に3種類のクェルセチン配糖体(ピーク1, 3, 6)である。これらのフラボノイドは、ブルーベリーの紅葉や食品用の抗酸化剤として認可されているブルーベリー葉抽出物にも多く含まれている。

成果の活用面・留意点

ブルーベリー培養細胞の色素は、アントシアニン色素の機能性検定試験用の標品、生合成研究用における合成酵素研究のための基質、医薬品原料としての利用が考えられる。ただし、培養細胞の色素を食品着色料として利用するには、新規の色素(製法、原料)扱いとなるため新たに認可を受ける必要がある。

具体的データ

表1 ブルーベリーのアントシアニン量

その他

  • 研究課題名:植物培養細胞によるアントシアニン色素の生産
  • 予算区分:パイオニア研究(アントシアニン)
  • 研究期間:平成12年度(平成8~11年)
  • 研究担当者:濱松潮香,森 隆(資源素材化研),徳安 健(資源素材化研),伏見 力,矢部希見子
  • 発表論文等:1)植物培養細胞によるアントシアニン色素の生産,食糧,39巻,pp.1-19 (2001)
                      2)ブルーベリー培養細胞による有用物質生産,食品工業,43巻,2号,pp.40-45 (2000)
                      3)ブルーベリー培養細胞の生産するアントシアニン色素の組成,第16回日本植物細胞分子生物学会大会要旨集,pp.107 (1998)