良食味米コシヒカリのDNA品種判別用のプライマーセット

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要約

コシヒカリのDNA品種判別を行うに際し、コシヒカリでのみバンドが出現しない「ネガキット」およびコシヒカリであることを確認するための「ポジキット」の2種類のマルチプレックス・プライマーセットを開発した。

  • 担当:食品総合研究所・食品素材部・穀類特性研究室
  • 代表連絡先:穀類特性研究室 0298-38-8045
  • キーワード:米、DNA、品種判別、プライマーセット、コシヒカリ
  • 分類:普及成果情報

背景

コシヒカリは、わが国での作付け面積割合が35%以上であり、最大の流通量を有しており、重要な品種である。改正JAS法施行を受けて、DNA品種判別技術によって米の内容と表示の確認を行うため、実用的プライマーセットの開発が求められていた。

成果の内容・特徴

  • 試料米として、食糧庁消費改善課品質管理室より提供された各県のコシヒカリ原種33点を使用し、比較のために49種類の他品種の試料米も使用した。試料量は0.4gの精米粉末を使用した。RAPD法によって得られる識別バンドをもとにプライマーのSTS化を行った。4種類のSTS化プライマーを組み合わせた「コシヒカリポジキット」の場合は、PCRによってコシヒカリのみ特有の3本のDNAバンドが検出され、他の49品種と識別できる。コシヒカリの3本のバンドパターンは全国33県のコシヒカリ原種で共通である(図1)。
  • 5種類のSTS化プライマーを組み合わせた2種類のマルチプレックス「コシヒカリネガキット」の場合は、全国33県のコシヒカリではバンドが全く検出されず、他の品種ではいずれかのバンドが検出された(図2)。これにより、5%以上の混合割合の場合には、コシヒカリへの他品種の混米を検出することができる。
  • このDNA品種判別技術は、試料が精米一粒や米飯一粒の場合にも、鋳型DNAの抽出・精製方法を工夫することによって適用が可能である。

成果の活用面・留意点

  • 食糧庁等の行政部局や主要検査機関あるいは各県の公設試験研究機関と協力して成果の普及に努めるとともに、さらに多数の試料によるデータベース構築が必要である。
  • コシヒカリへの混米の有無を「ネガキット」で試験し、混米のないことを確かめた後に、次に「ポジキット」で「コシヒカリ」であることを確認するという2段階試験も有用である。
  • 「ネガキット」で混米が確認された場合も、次に「ポジキット」によるPCRを行い、2回の多型から混米の種類、品種を推定することも可能である。

具体的データ

図1 コシヒカリ判別キット(ポジティブキット)

その他

  • 研究課題名:広範な品質の米及び変異米の食味特性の解明及び新評価技術
  • 予算区分:基礎研究推進事業(生研機構)
  • 研究期間:2000~2002年度 (2001年度)
  • 研究担当者:大坪研一・原口和朋・與座宏一・岡留博司・奥西智哉
  • 発表論文等:1) 大坪研一・中村澄子・橋野陽一・真鍋 勝・雲 聡・宮村 毅:米のDNA品種判別およびPCR食味判別の検討, 第48回日本食品科学工学会大会講要, p.79, 2001.
                      2) 大坪研一・中村澄子・今村太郎:米のPCR品種判別におけるコシヒカリ判別用プライマーセットの開発, 日本農芸化学会誌, 76(4), 388-397, 2002.