タンパク質リフォールディング技術

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要約

変性タンパク質の効率的なリフォールディング手法を開発した。この技術は、界面活性剤と高重合度シクロアミロース(CA)の機能を利用し、不活性型として発現したタンパク質を80%以上の高率で活性型にリフォールドする。

  • 担当:食品総合研究所・応用微生物部・生物変換研究室
  • 代表連絡先:生物変換研究室 0298-38-8061
  • キーワード:リフォールディング、界面活性剤、高重合度シクロアミロース、CA
  • 分類:普及成果情報

背景

遺伝子組換え技術を活用することにより、ヒトや植物由来のタンパク質を微生物や試験管内で大量に製造することが可能になってきている。しかしながら、微生物などに作らせたヒトや植物由来のタンパク質はしばしば不活性型の凝集物になるという問題を抱えている。本研究は、このような不活性型凝集物の間違った構造を解きほぐし、正しい立体構造に巻き戻す(リフォールド)技術の開発を目的とした。

成果の内容・特徴

生体内におけるタンパク質の立体構造形成を促す機能を試験管内で代行可能な物質を検討し、適当な界面活性剤と高重合度シクロアミロース(CAと省略)の組み合わせが効果的に機能することを明らかにした。これを利用して、タンパク質をリフォールドする技術を開発した。
本技術は、以下の3段階からなる。

  • 不活性型凝集タンパク質を変性剤(6Mグアニジン塩酸、S-S結合を有するタンパク質の場合はDTTも添加)により溶解し、間違った構造を解きほぐす。
  • 0.05%界面活性剤溶液(CTAB, SB3-14, Tween 40,もしくはTween 60が汎用性に優れている。必要に応じてDL-シスチンも添加)を添加し、変性剤を希釈すると同時に、界面活性剤がタンパク質と結合することにより、タンパク質が再び凝集して不活性型になるのを阻止する。
  • CA溶液(最終濃度0.6%)を添加する。CAがタンパク質・界面活性剤複合体から界面活性剤を徐々に取り去ることにより、タンパク質が正しい立体構造を形成し、活性型へとリフォールドされる。

    技術の特徴:

    1:) 操作が簡便であり、特殊な装置、作業を必要としないため、自動化、スケールアップへの対応が容易である。
    2:) 汎用性が高く、現時点までに試験に供したほぼ全てのタンパク質が活性型に変換される。変換効率も高く、特に従来技術では困難とされているオリゴマータンパク質(表1)、S-S結合を有するタンパク質に対しても有効である(表2)。
    3:) 操作に要する時間が半日程度であり従来法(数日)に比較して大変短い(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 酵素、抗体、などの有用タンパク質の効率的生産。
  • ポストゲノム時代におけるタンパク質研究などへの活用が期待される
  • 酸、熱などにより変性したタンパク質の再利用。

具体的データ

表1 変性クエン酸合成酵素のリフォールディングに対する界面活性剤の効果

その他

  • 研究課題名:人工シャペロンによるタンパク質の立体構造制御
  • 予算区分:バイテク先端技術 (プロテオーム)
  • 研究期間:2000~2002年度 (2001年度)
  • 研究担当者:町田幸子・林 清・鷹羽武史*・寺田喜信*・藤井和俊*(*江崎グリコ・生物化学研究所)
  • 発表論文等:1) Machida,S.,et al. Cycloamylose as an Efficient Artificial Chaperone for Protein Refolding. FEBS Lett. 486, 131-135. (2000)
                      2) 町田幸子, 林 清, 人工シャペロン用キット, 特願2000-071533(2000)
                      3) Machida, S., and Hayashi, K. Artificial Chaperone Kit 09/635.429 USA(2000)
                      4) 町田幸子, 林 清, 鷹羽武史, 寺田善信, 藤井和俊:変性タンパク質の活性化方法, 特願2000-355064(2000)