加圧通電処理による液状食品中の枯草菌胞子の連続殺菌装置の開発

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要約

0.3MPaの加圧下で液状食品に20kHz,10kV/cmの交流電界を印加したところ、通電による加熱効果と電界による電気穿孔の相乗効果で、枯草菌胞子を連続的に4対数以上低減できた。本装置の加熱処理時間が0.1秒以下と極めて短時間のため、食品の風味の損傷が少ない。

  • 担当:食品総合研究所・食品工学部・製造工学研究室
  • 代表連絡先:製造工学研究室 0298-38-8029, Mail Address
  • キーワード:通電加熱、電気穿孔、高電圧パルス、胞子
  • 分類:参考

背景

食品の安全性向上のための殺菌処理は欠かせないものであるが、食品の加熱による品質劣化を伴わずに、耐熱性の高い微生物を有効に殺菌する手法が嘱望されていた。本装置は食品研究成果情報第11号の「液状食品の連続通電殺菌装置の開発」において、大腸菌および酵母菌の連続殺菌を実現したものを、加圧下で行うことにより、耐熱性の胞子の殺菌まで対応できるようにするものである。

成果の内容・特徴

  • 耐圧容器内に通電ユニットおよび冷却ユニットを収め、容器内部を窒素ガスで0.3MPaまで充填する。液状食品はポンプで120ml/minの流速で容器内に搬送され、10kV/cm, 20kHzの交流電界中を0.1秒以内で通過させることで120°Cまで昇温された後、直ちに耐圧容器内の冷却ユニットで80°C以下まで冷却後、耐圧容器外の二次冷却器で10°C以下に冷却される。(図1)
  • 本装置の電界による殺菌効果を検証するため、0.1%~0.5%濃度の食塩水に枯草菌の胞子を添加し、いずれの濃度の食塩水においても通電ユニットの出口温度が110°Cとなるように印加電界を制御して通電処理を行った。印加電界と枯草菌の菌数をプロットしたところ、大腸菌の場合と同様に、同一の温度条件の場合は電界が高いほど殺菌効果が高くなることがわかった。(図2)
  • 市販の濃縮還元オレンジジュースに枯草菌胞子を添加したものに、未処理、加圧通電処理、マイクロ波加熱、100°Cの温浴中での加熱処理を行ったところ、加圧通電処理が最も殺菌効果が高く、オレンジジュース中に含まれる本来含まれるアスコルビン酸の損傷は、加圧通電処理を行ったものがもっとも少ないことがわかった。(図3・図4)
  • 温州みかんの果汁を加熱殺菌処理した場合、芋煮臭と呼ばれる特異的なにおいの発生が知られているが、加圧通電処理を行ったところ、芋煮臭が発生しないことがわかった。これは、GCスペクトルの結果からも確認された。

成果の活用面・留意点

本研究で開発した加圧通電処理装置は液状食品中の枯草菌胞子を連続的に殺菌することを可能としたもので、今後、実用化を目指したスケールアップを行う。

具体的データ

図1 加圧通電殺菌装置

その他

  • 研究課題名:電気的処理による微生物の殺菌効果
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:1999~2001年度 (2001年度)
  • 研究担当者:植村邦彦・五十部誠一郎
  • 発表論文等:1) Kunihiko Uemura, Seiichiro Isobe: Developing a new apparatus for inactivating Bacillus subtilis spore in Orange juice with a high electric field AC under pressurized conditions, Journal of Food Engineering, (in press).
                      2) Kunihiko Uemura, Seiichiro Isobe: Developing New Apparatus for Inactivating Escherichia coli in saline water with high electric field AC, Journal of Food Engineering, 53(2002)203-207.
                      3) 植村邦彦:液体の連続殺菌装置および液体の連続殺菌方法, 特許登録2964037号, 平成11年8月13日
                      4) Kunihiko Uemura: Continuous Liquid Pasteurizing Apparatus and Method, USA Patent, 6056884, 平成12年5月2日