新規天然油脂エタノールエマルションの作製

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要約

食品用乳化剤を用い、天然油脂エタノールエマルションを調製する。デカグリセリンオレイン酸モノエステル(MO750)を用いることで、長期間安定な油中エタノール滴型(E/O)エマルションを作製する。乳化剤の界面活性および分散挙動を調べることにより、乳化剤の役割を解明し、E/Oエマルションの安定化機構を提案する。

  • 担当:食品総合研究所・食品工学部・反応分離工学研究室
  • 代表連絡先:反応分離工学研究室 0298-38-7997
  • キーワード:食品用乳化剤、天然油脂エタノールエマルション、安定化機構
  • 分類:参考

背景

従来の水・油系エマルションは、有効成分のキャリヤシステムとして幅広い分野で利用されている。しかしながら、多くの機能性成分や薬物は水や油への溶解度が低いため、エマルションに包括することは困難で、利用が限定される。エタノールを利用したエタノール・油エマルションは、このような成分を大量かつ安定に保持することが期待できる。本研究では、食品用乳化剤を用い、天然油脂エタノールエマルションを作製する。

成果の内容・特徴

  • 天然油脂エタノールエマルションの作製:油相にはひまわり油、大豆油、オリーブ油を使用する。乳化剤には様々な市販の食用乳化剤を使用する。まず乳化剤をエタノールに溶解し油を添加した後、ホモジナイザーによりエマルションを調製する。MO750を用いることで、数μmの液滴径を有し、常温で1年以上安定な油中エタノール滴型(E/O)エマルションが作製される。
  • 乳化剤の界面活性および分散挙動:MO750は油・エタノール界面の界面張力に対する低下能が小さいものの、E/Oエマルションの安定性に大きく寄与している。MO750はエタノール中で慣性半径約7Åの微小散乱体として存在するが、油中では集合しやすい約90Åの大きな集合体として存在する。
  • E/Oエマルションの安定化機構:MO750の集合体が液滴の界面に蓄積し、強固な多層界面膜を形成することによりE/Oエマルションを安定化する。

成果の活用面・留意点

機能性成分を包括したE/Oエマルション作製とその特性に関する研究が望まれる。

具体的データ

図1 E/Oエマルションの粒度分布

その他

  • 研究課題名:超単分散性マイクロスフィアを用いた新規な分離場および反応場の構築に関する基礎的研究
  • 予算区分:生研機構基礎研究推進事業
  • 研究期間:1997~2001年度 (2001年度)
  • 研究担当者:中嶋光敏・許 晴怡
  • 発表論文等:1) Q.Y. Xu, M. Nakajima, et al.: Effect of the Dispersion Behavior of a Nonionic Surfactant on Surface Activity and Emulsion Stability. J. Colloid Interface Science, 242, 443-449 (2001)
                      2) Q.Y., Xu, M. Nakajima, et al.: The Effects of Ethanol Content and Emulsifying Agent Concentration on the Stability of Vegetable Oil-Ethanol Emulsions, J. American Oil Chem Soc, 78, 1185-1190 (2001)
                      3) Q.Y., Xu, M. Nakajima, et al.: Factors Affecting the Preparation of Ethanol-in-oil Emulsions, Food Science and Technology Research, 8, 36-41 (2002)
                      4) 中嶋光敏, 鍋谷浩志, 市川創作, 許 晴怡 : 機能性エマルション, 平成12年3月29日(出願番号:特願平12-90441)