浸漬水電気伝導率の測定による青果物の損傷評価

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

収穫後の青果物の物理的損傷を、試料浸漬水の電気伝導率を測定することによって評価する手法を開発した。イチゴの剥皮および振動による損傷の程度と電気伝導率の増加程度はよく一致し、電気伝導率による青果物の損傷評価が可能である。

  • 担当:食品総合研究所・食品工学部・流通工学研究室
  • 代表連絡先:流通工学研究室 0298-38-8027
  • キーワード:電気伝導率、浸漬水、青果物、損傷、イチゴ、収穫後処理、品種
  • 分類:参考

背景

収穫、選別、調製、包装、荷役、輸送などにおいて発生する圧迫、静荷重、衝撃、振動などは、青果物に物理的損傷を与える。損傷を生じない作業、包装、輸送条件などの解明、並びに、耐損傷性品種の開発などのためには、収穫および収穫後の流通過程で生じる損傷を定量化する必要がある。これまで、輸送振動による損傷評価は、おもに外観によって行われてきた。しかし、外観による損傷評価は、損傷度が比較的大きい条件でしか利用できない、外観変化を生じるまでには時間がかかり迅速な評価が困難である、などの問題がある。そのため、損傷度の小さい場合にも利用が可能で、比較的短時間で評価が可能な損傷評価法の開発が望まれている。そこで、青果物を脱イオン水に浸漬し、損傷によって生じる細胞液等電解質の漏出を電気伝導率計を用いて測定する手法について、イチゴを供試材料として検討した。

成果の内容・特徴

  • 測定対象は、易損傷性で、その損傷防止方法の開発が求められているイチゴ(品種:とよのか)とした。損傷の種類としては、損傷として最も一般的な果皮の損傷を模擬した剥皮、および、物流過程の主要な損傷要因である振動、の2種類とした。
  • ナイフで果皮を除去した試料を脱イオン水に浸漬し、浸漬水の電気伝導率を経時的に測定したところ、果皮の除去程度の大きいものほど電気伝導率の増加程度が大きい。(図1、2)
  • ポリスチレン製容器にパック詰したイチゴに、上下1軸方向の振動を加えた。周波数と加振時間を一定(5Hz、40秒)とし、加速度を変化させた場合、加速度が大きいほど電気伝導率の増加程度が大きい(図3)。
  • 周波数と加速度を一定(5Hz、1.4G)とし、加振時間を変化させた場合、加振時間が長いほど電気伝導率の増加程度が大きい。(図4)
  • 図3の加速度1.6Gにおいては、外観的には損傷が観察されないものの、図1の10~20%の剥皮に相当する電気伝導率の増加が見られた。したがって、本法は感度の高い損傷評価法であるといえる。

成果の活用面・留意点

イチゴの品種や栽培時期等によって果実内の電解質濃度が異なると考えられるので、絶対評価を行うためには、果実に含まれる電解質総量で規格化する必要がある。 浸漬水に呼気などの二酸化炭素が溶解した場合、電気伝導率を大きくするため、注意が必要である。

具体的データ

図1 剥皮割合と電気伝導率変換

その他

  • 研究課題名:物理化学的ストレスが青果物の生理特性に及ぼす影響の解明
  • 予算区分:経常研究
  • 研究期間:2000~2004年度 (2001年度)
  • 研究担当者:椎名武夫・中村宣貴・Yueming Jiang(中国科学院園芸研究所)・中原亜理江(宮崎県総農試)
  • 発表論文等:Y. Jiang, T. Shiina, N. Nakamura, A. Nakahara : Electrical Conductivity Evaluation of Postharvest Strawberry Damage, J. Food Sci., 66(9), 1392-1395(2001) (2001)