食品製造ラインの迅速自主衛生管理に有効な蛋白質ふき取り検査法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

蛋白質拭き取り検査法の有効性を検討したところ、本法は実際の微生物汚染との間で高い相関を示す。食品製造現場での初期投資を抑えた自主管理法として有効である。

  • キーワード:自主衛生検査、蛋白質ふき取り検査、迅速検査
  • 担当:食総研・食品安全研究領域・食品衛生ユニット
  • 連絡先:電話029-838-8067
  • 区分:食品試験研究
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

蛋白質拭き取り検査法は、判定結果が10秒程度で得られ、高感度かつ目視で汚染状況が判定可能であることから、食品製造現場での有効活用が期待されている。しかし、実際の食品製造現場において微生物汚染との関係を実証した報告は見当たらないため、本法の有効性について情報を提供する必要がある。それゆえ、様々な稼働生産ラインにおいてふき取り検査を実施し、蛋白質ふき取り検査法と微生物学的汚染度判定結果との比較や、従来の現場作業監督者による経験的判断での汚染度判定結果と比較し、本法の有効性を検証する。

成果の内容・特徴

  • 蛋白質ふき取り検出市販キットの手法の一つであるpH誤差法を用いて検出限界を確認した結果、80~40μgの蛋白質量が存在すれば確実に通常の肉眼で検出できる(図1)。本原理は医療分野で利用されている尿蛋白検査法を利用したものであり、BPB系pH指示薬が蛋白質存在下では塩様青色化合物を形成することによる。蛋白質が存在すれば青緑色の呈色が目視により確認でき、即座にふき取り箇所の汚染の有無を検出できる。
  • 実際に稼働している食品製造現場で食品生産ライン(オムレツ・和菓子・惣菜・鶏肉・カット野菜など)からサンプリングを実施(図2)し、本法・微生物汚染・経験的判断での汚染判定を比較した結果を表1に示す。蛋白質ふき取り検査法と他2つの汚染度判定結果との一致率は極めて良好であり(表1)、蛋白質汚染から間接的に微生物リスクを含めた汚染原因を検出できる。本法は初期投資を抑えた自主衛生管理法として有効である。
  • 製造現場監督者による経験的判断での汚染判定では見落としてしまうような微量な汚染についても本法では検出可能であり(表1)、食品製造過程の汚染環境の高感度モニタリングに有効である。

成果の活用面・留意点

  • 蛋白質ふき取り検査法は、目視による判定法であり、特別な技術・測定機器を必要としないため誰でもその場で汚染度確認が可能であり、本法は製造現場へ普及に適する技術と考えられる。
  • 蛋白質ふき取り検査法は微生物の有無を指標とした検査法ではなく、あくまでも蛋白質の有無を指標として汚染の存在を判断するものである。従って、微生物を直接検出するものでは無い点を留意して活用する必要がある。

具体的データ

図1 pH誤差法による蛋白質検出感度

図2 実験食品製造ラインからふき取り検査を実施

表1 実験食品製造ラインでの蛋白質ふき取り検査結果とその他の汚染検査との一致

その他

  • 研究課題名:危害要因の簡易・迅速・高感度検出技術の開発
  • 課題ID:321-a
  • 予算区分:民間結集型アグリビジネス
  • 研究期間:2004~2006年度
  • 研究担当者:川崎晋、川本伸一
  • 発表論文等:川崎ら(2006) 日食微誌 23(4):230-236