光ルミネッセンス(PSL)による食品照射履歴検知技術の実用化
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
香辛料等の食品の放射線照射履歴を迅速検知する光ルミネッセンス(PSL)計測装置と判定法を開発した。本判定法では食品ごとの判定基準発光量の設定の必要はなく、照射後2年経過した試料の判別も可能である。
- キーワード:光ルミネッセンス(PSL)、熱ルミネッセンス(TL)、食品照射、香辛料
- 担当:食総研・食品工学研究領域・反応分離工学ユニット/食総研・食品安全研究領域・上席研究員
- 連絡先:電話029-838-7323
- 区分:食品試験研究
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
一部の食品への放射線照射は有効な殺菌、殺虫、発芽抑制の技術として国際的に認知され利用されており、検知に関する研究もなされている。一方、日本ではバレイショの発芽抑制を目的とした150Gy以下のγ線照射以外は認められておらず、検知のための公定法もない。CEN規格(欧州標準化委員会)には、10種類の食品照射検知法があり(2007.01現在)、香辛料などの照射検知法として、熱ルミネッセンス(TL;Thermoluminescence)法や光ルミネッセンス(PSL;Photostimulated luminescence )法などの発光計測法がある。TL法は高精度であるが、判別までの一連の操作には約3日を要する。既存PSL法(EN13751)は数分以内で照射履歴を判別できるが、判別基準となる積算発光量を事前に設定する必要があり、より客観的な判別方法が必要とされていた。
本研究では輸入食品の履歴検証や消費者への信頼できる情報提供の観点から、迅速な照射食品の検知技術として新たにPSL計測装置を開発し、基準発光量を必要としない客観的な判別方法を見出した。
成果の内容・特徴
- 自発発光計測装置に、励起光源、励起光カットフィルタを組込みPSL計測装置を開発した(図1)。測定用試料セルには5cmφのステンレスシャーレを使用する。
- PSLは食品そのものではなく、微量に混入した鉱物等の結晶構造が発光源と考えられている。放射線由来のエネルギは、結晶構造中にトラップされ光励起(刺激)により光として放出される。そのため、放射線照射された試料では励起光照射後PSLの発光量は減衰し、対照区ではPSLが生じないことを明らかにした(図2)。本判別法は既存PSL法のような判別のための基準発光量が不要である。
- 開発装置・判別法を使用して、市販の香辛料・乾燥野菜(計30種)に1kGy照射し、1ヶ月後の検知の可能性を検討したところ、28種で検知可能であった。さらに、5kGy以上照射したパプリカでは2年経過しても検知可能である(図3)。
成果の活用面・留意点
- 本研究の成果により、香辛料や乾燥野菜の放射線照射の有無を迅速に測定する技術ならびに測定装置を開発した。
- 今後は複数の研究機関での共同実験(コラボ)により、妥当性確認、標準化する。
- 本研究は、食品総合研究所、東京都立産業技術研究所(現:地方独立行政法人 東京都立産業技術センター)ならびに日本放射線エンジニアリング株式会社との共同研究で実施されたものである。
具体的データ



その他
- 研究課題名:流通・消費段階における情報活用技術及び品質保証技術の開発
- 課題ID:324-b
- 予算区分:安信プロ
- 研究期間:2006-2010年度(2006年)
- 研究担当者:萩原昌司、等々力節子、鍋谷浩志
- 発表論文等:1)後藤典子ら(2005) 食品照射 40巻(1,2):11-14
2)萩原昌司、等々力節子(2006)食総研ニュース No.16:6-7