DNAマーカーによる品種識別と無機元素分析によるタマネギの高度産地判別法

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要約

北海道、兵庫県、佐賀県及び外国産を分類する12元素による4群の判別モデル、国内3産地と外国産を分類する7~8元素による2群の判別モデル、Sr同位体比(87Sr/86Sr)と無機元素組成の組合わせによる判別式及び19種のDNAマーカーを用いた国内外の計45品種のアリール頻度に基づくカタログを作成することで、高い的中率での判別が可能である。

  • キーワード:タマネギ、原産地判別、無機元素分析、ケモメトリックス、DNAマーカー、アリール頻度
  • 担当:食総研・食品分析研究領域
  • 連絡先:電話029-838-8009
  • 区分:食品試験研究
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

輸入量の増加に伴い輸入品を国産と表示する産地偽装問題の発生や国産品種が無断で海外で生産される恐れが生じている。タマネギは産地に適した品種が栽培されることを利用して、タマネギの無機元素組成、同位体比分析、DNAによる品種識別から産地を判別する方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • タマネギ中の無機元素をICP-AES及びICP-MSで測定し、北海道、兵庫県、佐賀県及び外国産間で分類する12元素による4群の判別モデルを構築し、309試料を87%の分類率で分類できた。北海道産と外国産(7元素)、兵庫県産と外国産(8元素)及び佐賀県産と外国産(8元素)間で分類する2群の判別モデル3種を構築し、それぞれ96%、97%及び94%の分類率で分類できた。クロスバリデーションによる検証で、4群の判別モデルでは85%の的中率で、2群の判別モデルでは、それぞれ94%、95%及び94%の的中率で判別できた。
  • Sr同位体比(87Sr/86Sr)は、第1段階でSr/Ca比、Ca濃度と組合わせ、第2段階で比による5種の判別式を用い、その判定率は、86.3~96.7%であった。ブラインド試料10点による検証で、第1段階で外国産と北海道産を、第2段階で国産、外国産と佐賀県産を判別できた。
  • 19種のSTS化したDNAマーカーで、国内外の計45品種のアリール頻度に基づくカタログを作成し、2群の比率の差の検定で、0.1%及び1%有意水準で一部品種間を除いて識別が可能であった。ブラインド試料17点による検証では、全4機関で品種識別でき、他殖性作物でも品種を集団として捉え、マーカーの頻度比較で品種識別できることが示された。

成果の活用面・留意点

  • 無機元素組成による産地判別は、2群の判別モデルで、国内3産地産と外国産との判別への使用が適当である。判別モデルは、複数試験室による妥当性確認を行い、農林水産消費技術センターの検査業務に使用できる形にマニュアル化され、同センターのweb site で公開される
  • DNAマーカーよる品種識別は、北海道では主要な栽培品種が限定されるので、品種名を付けた流通ができれば「産地偽装を見破る」有力な方法として利用できる。西日本では、栽培品種も多く、多くは品種が混在して流通しているが、栽培・流通管理を適正にしてブランド化すれば、品種偽装あるいは品種混在品との判別が可能となる。
  • 品種識別には、対象品種の同年産の最低24個体による各DNAマーカーのアリール頻度カタログを用い、15個体以上の調査サンプルで判定する。また、相同性が高い品種の推定には、本研究で作成した45品種の2004年度カタログ(発表論文に掲載)が使用できるが、本カタログは国内で栽培されている全ての品種をカバーしていないこと、各品種のアリール頻度は採種ロット毎に少なからず変化することに留意する。

具体的データ

図1 産地判別法検討のフロー

図2 タマネギの品種識別に用いた19 種類のDNA マーカー

その他

  • 研究課題名:流通・消費段階における情報活用技術及び品質保証技術の開発
  • 課題ID:324-b
  • 予算区分:高度化事業
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:安井明美、堀田博、鈴木忠直、有山薫(消費技セ)、法邑雄司(消費技セ)、足立静香(消費技セ)、
    臼井裕一(消費技セ)、西田忠志(北見農試)、野田智昭(北見農試)、柳田大介(北見農試)、
    紙谷元一(北海道中央農試)、河野哲(兵庫農技セ)、渡辺和彦(兵庫農技セ)、
    永井耕介(兵庫農技セ)、青山喜典(兵庫農技セ)、小河甲(兵庫農技セ)、望月証(兵庫農技セ)、
    塩飽邦子(兵庫農技セ)、吉田晋弥(兵庫農技セ)、山元義久(兵庫農技セ)、松本純一(兵庫農技セ)、
    玉木克知(兵庫農技セ)、杉本琢真(兵庫農技セ)、小林尚司(兵庫農技セ)、中島寿亀(佐賀農研セ)、
    木下剛仁(佐賀農研セ)、加藤富民雄(佐賀大)、井上興一(佐賀大)、田代洋丞(佐賀大)
  • 発表論文等:1)Ariyama, K et al. (2006), J. Agric. Food Chem., 54(9):3341-3350
    2)Ariyama, K et al. (2007), J. Agric. Food Chem., 55(2):347-354
    3)臼井裕一ら(2006) 食科工 53 (9):498-504
    4)臼井裕一ら(2006) 食科工 53 (9):505-513