食品に含まれるトランス脂肪酸組成のHPLC法による分析方法

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要約

食用油脂や食品に含まれるトランス脂肪酸には様々な構造異性体が存在する。GC法によるトランス脂肪酸分析の問題を回避し、食品中のトランス脂肪酸組成を正確に分析するためにHPLC法によるトランス脂肪酸分析を開発する。

  • キーワード:トランス脂肪酸、脂肪酸メチルエステル、分析、HPCL法
  • 担当:食総研・食品素材科学研究領域・脂質素材ユニット
  • 連絡先:電話029-838-8039
  • 区分:食品試験研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

食品中のトランス脂肪酸による心疾患などの健康障害の可能性が社会的な問題になっている。食品に含まれるトランス脂肪酸は、構造異性体が多く存在し、食品によって含まれるトランス脂肪酸組成も異なっている。このような複雑で微量なトランス脂肪酸の分析は、通常、GC法(ガスクロマトグラフィー)で分析されるが、分析上の問題点もある。食品に含まれるトランス脂肪酸組成を、より正確に分析するために、HPLC法によるトランス脂肪酸分析について検討した。

成果の内容・特徴

  • 脂質は常法に従ってメチル化した。炭素数18の不飽和脂肪酸のシス型とトランス型を分離できるHPLCカラム、溶出溶媒組成、カラム温度等を詳細に検討した。
  • 各脂肪酸メチルエステルを検出するために荷電粒子検出器(CAD)を使用した。
  • 各種のHPLCカラムの中で、数種類のカラムによって、不飽和脂肪酸メチルエステルのシス型とトランス型を分離することが可能であった。
  • GC法では、C18:1のシス型位置異性体の一部がトランス型位置異性体の一部に重なり、トランス型の正確な定量が困難である。HPLC法では、シス型位置異性体同士、トランス型位置異性体同士は分離できないが、シス型とトランス型は、完全に分離することができた(図1)。HPLC法でシス型とトランス型を分画した後、GC法で各々の位置異性体を分析することが可能である。
  • HPLC法によるリノレン酸については、シス型と7種類のトランス型(ひとつ以上のトランス型を含むもの)を分離することができた。(図2)。GC法では、リノレン酸のトランス型のピーク部分にC20:0やC20:1の脂肪酸のピークのが重なり解析が困難であるが、HPLC法では、これらのピークは完全に分離できた。
  • さらに、GC法では、γリノレン酸は、リノレン酸のトランス型のピークと重なり、トランス脂肪酸の定量を妨げる。本法では、γリノレン酸はシス型の近くに溶出するので(図3)、C18:3のトランス脂肪酸のより正確な分析ができた。

成果の活用面・留意点

  • HPLC法で各種のトランス脂肪酸を分画し、GC法で分析すれば、これまでGC法単独では分析が困難であったトランス脂肪酸の構造異性体やトランス脂肪酸組成をより正確に測定することが可能になる。
  • HPLCの溶出溶媒やカラム温度を検討することにより、各種の脂肪酸メチルエステルの溶出時間を容易に移動させることができる。
  • 今後、HPLC法において、脂肪酸メチルエステルの二重結合位置異性体同士の分離についても検討を加える。

具体的データ

図1 CAD-HPLC 法によるC18:1 とC18:2 の脂肪酸メチルエステル異性体の分析

図2 CAD-HPLC法によるC18:3の脂肪酸メチルエステル異性体の分析

図3 CAD-HPLC法によるγC18:3とC18:3の脂肪酸メチルエステル異性体の分析

その他

  • 研究課題名:加工品製造工程で生成する有害物質の制御技術の開発
  • 課題ID:323-f
  • 予算区分:食品安信プロ
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:都築和香子、長尾昭彦