振動耐性を考慮したランダム振動試験法の開発

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要約

振動測定用の簡易ロガーで得られた多数の短時間振動データから、試験対象物の振動耐性に基づいて個々のデータに対して重み付けを行い、周波数ごとに平均化処理することで、試験用の単一パワースペクトル密度(PSD)曲線を求める方法を開発した。この新たなランダム振動試験条件設計手法を用いることで、過不足のない最適な緩衝包装設計が可能となる。

  • キーワード:輸送損傷、振動耐性、ランダム振動試験、パワースペクトル密度(PSD)、簡易ロガー
  • 担当:食総研・食品工学研究領域・流通工学ユニット、食品包装技術ユニット
  • 連絡先:電話029-838-8027
  • 区分:食品試験研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

これまで道路整備や輸送車両の改良などによる輸送環境の改善がなされてきたが、輸送振動による食品およびその包装の損傷の発生は大きな問題である。加えて、地球環境保全の観点から包装の適正化が強く求められている。損傷防止のための緩衝包装設計を目的とするとする振動試験方法としては、従来、正弦波一定周波数や正弦波掃引による方法が利用されてきたが、2004年に改訂されたJIS Z 0232においては、ランダム振動試験が推奨されている。
そこで本研究では、ランダム振動試験において、実走行における損傷を等価に再現することで適正な緩衝包装設計を行うための、新たな試験方法の開発を目的とした。

成果の内容・特徴

  • トラック、貨車、船舶などの輸送機関の振動加速度を簡易ロガーによって測定し、加振機制御用の単一PSD曲線を求める方法を開発した。これは、得られた多数の短時間振動データに対して、振動試験対象物の振動耐性に基づいて重み付け処理を行うことにより得られる。
  • エアサスペンションを装着したトラックで高速道路を走行して得た約250個の上下方向振動のPSD曲線データを用いて、多数のPSD曲線から単一のPSD曲線を求める際に、単純平均(A)、ピーク値(B)、S-N曲線を用いることで振動耐性を考慮した新開発の平均化処理(C)による結果の比較例を、図1に示す。Aの場合では振動試験に合格する包装条件であっても実輸送では内容物に損傷が生じる可能性が、Bの場合では振動試験をパスするために過剰な包装が必要となるが、新たに開発したCの場合には、実輸送で内容物に損傷が生じない、最適な緩衝包装を設計できる。
  • 上記方法では、実輸送における損傷を等価に再現するためには、走行時間に相当する振動処理が必要となるが、S-N曲線のαの値に基づいてPSD値を増加させることで、試験時間を短縮することが可能である。図2には、図1のCに対して、試験時間を1/10に短縮するための加振機制御用PSD曲線を、短縮前のPSD曲線とともに示す。

成果の活用面・留意点

  • 個別の輸送環境に対応した振動試験用PSD曲線を作成するためには、代表的な輸送環境におけるPSD曲線を収集・整備する同時に、それらを用いて最適なPSD曲線を作成するための手法開発が必要である。
  • 個々の食品の緩衝包装設計に利用するためには、対象食品の振動耐性を表すS-N曲線が必要であり、試験の効率化のためには、S-N曲線の簡易な作成方法の開発が求められる。

具体的データ

図1 実走行振動データの加振機制御用データへの変換の比較

図2 試験時間を1/10に短縮するための加振機制御用データの作成例

その他

  • 研究課題名:農産物・食品の流通の合理化と適正化を支える技術の開発
  • 課題ID:313-c
  • 予算区分:交付金プロジェクト
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:椎名武夫、中村宣貴、石川豊
  • 発表論文等:1)臼田ら(2006)農業施設 37(1):3-9
    2)臼田ら(2006)農業施設 36(4):205-212
    3)椎名(2006)包装技術 44(10):753-761