スペクトルイメージングによるブルーベリー果実原料中の異物検知技術

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要約

680 nm前後の3波長においてブルーベリー果実およびその上に設置した葉・枝を撮影し、得られた分光画像に画像処理を適用し、異物の検知画像を作成した。その結果、異物が実際に置かれた位置と、画像上で異物である確率が95%以上と判定された位置は良好に一致した。

  • キーワード:スペクトルイメージング、可視化、異物、検知、ブルーベリー
  • 担当:食総研・食品工学研究領域・計測情報工学ユニット
  • 連絡先:電話029-838-8047
  • 区分:食品試験研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

ブルーベリー果実の加工現場では、金属探知器やX線検査器で除去できない異物の目視検査が行われている。しかしながら、目を酷使するため頻繁な交代が必要であり、多数の作業者を雇用せざるを得ないため食品企業にとってはコスト高が問題となっている。さらに、異物によっては果汁で果実と同じ色に染まり、目視での検知が困難なものがある。そこで本研究では、対象の位置情報とスペクトル情報を同時に取得し、肉眼では見えない情報を可視化する「スペクトルイメージング」により、目視では検知が難しい異物を高精度で検知可能な技術の開発を目指した。

成果の内容・特徴

  • ブルーベリー果実と様々な異物の可視吸光スペクトルを計測した。得られたスペクトルを2次微分したところ、ブルーベリー果実と葉・枝の2次微分吸光度が大きく異なる波長帯が680 nm近傍に存在することが明らかとなった(図1)。
  • 680 nm近傍の3波長においてブルーベリー果実およびその上に設置した葉・枝を撮影し、得られた分光画像に対して画像処理を適用し、各画素が吸光度の2次微分値となる画像を作成した。
  • さらに、統計解析によって各画素が異物である確率を算出し、値の大小によって彩色することにより、異物の検知画像を作成した。
  • その結果、異物が実際に置かれた位置と、画像上で異物である確率が95%以上と判定された位置は良好に一致し(図2)、本手法により肉眼では検知不能な異物を効率的に検知可能であることが示唆された。

成果の活用面・留意点

  • 本技術は、分光画像の撮影波長帯を変えることにより、様々な農産物を対象とした異物・危害物質検知に応用可能であると考えられる。
  • 本技術が実用化されれば、食品の安全・安心確保に寄与し、食品企業のコスト削減及び消費者の食品に対する信頼感向上に資すると期待される。
  • 実用化に際しての課題として、多波長同時撮影技術の開発と、画像処理の高速化が挙げられる。前者に関してはラインスキャンカメラの導入、後者に関しては専用の画像処理LSIの開発により解決可能であると考えられる。

具体的データ

図1 ブルーベリー果実及び異物の二次微分吸光スペクトル

図2 異物の検知画像

その他

  • 研究課題名:危害要因の簡易・迅速・高感度検出技術の開発
  • 課題ID:321-a
  • 予算区分:食品機能性
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:蔦瑞樹、杉山純一
  • 発表論文等:1)杉山純一ら 特開2004-301690、2004年10月28日
    2)M. Tsuta et al (2006) Food Sci. Tech. Res., 12 (2):96-100