高圧処理による細菌の不活化および損傷回復

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

高圧処理によって、処理直後には不活化されていた細菌(大腸菌)が保存中に増殖能力を回復して、栄養成分の処理前と同等かそれ以上の細菌数にまで増加する。また、保存中の温度は回復に大きく影響し、回復に最適な温度は25℃である。

  • キーワード:高圧処理、殺菌、損傷菌、回復
  • 担当:食総研・食品工学研究領域・食品高圧技術ユニット
  • 連絡先:電話029-838-7152
  • 区分:食品試験研究
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

高圧処理による微生物の不活化に関する研究はこれまでにも多数行われてきた。一方、高圧処理後の微生物が保存中に回復し、増加する現象が近年報告されるようになってきた。このことは高圧処理による微生物制御の確実性に大いに関わる問題である。しかし、回復に関する詳細な研究はこれまでになかった。そこで、本研究では高圧処理後の細菌(Escherichia coli)の回復挙動を詳細に検討するとともに、回復を抑制する手法の開発を目的とした。

成果の内容・特徴

  • 高圧処理後の回復に及ぼす栄養成分の影響
    高圧処理によって不活化された細菌(E.coli ATCC 25922)の回復には栄養成分を必要としない。すなわち、無栄養状態のリン酸緩衝液中において保存した場合にも、栄養培地中での回復と比べて緩やかではあるが、高圧処理前と同等の菌数にまで回復する(図1)。また、回復が開始するまでに要する時間は、処理強度すなわち、処理圧力が高くなるほど長くなる。
  • 高圧処理後の回復に及ぼす温度の影響
    処理直後に一定期間冷蔵保存(4℃)した後に室温保存(25℃)に切り替えると、細菌数が処理前と同等にまで増加するが、処理直後に増殖の至適温度である37℃で保存した後に室温保存(25℃)に切り替えると、回復しない(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 高圧処理では処理直後に細菌が検出されなくても、保存中に回復する場合がある。したがって、高圧処理食品の安全性を確保するためには、保存試験を適切な条件で行い、回復の有無を確認する必要がある。
  • 高圧処理を施した食品を流通させる場合には、損傷回復を抑制するための適切な温度管理、例えば一定期間比較的高い温度(37℃程度)で保存する等、が必要である。

具体的データ

図1 液体培地中( 25°C ) における高圧処理後の大腸菌の回復図2 リン酸緩衝液中( 25°C ) における高圧処理後の大腸菌の回復

図3 高圧処理後の大腸菌の回復に及ぼす保存温度の影響

その他

  • 研究課題名:流通農産物・食品の有害生物の制御技術の開発
  • 課題ID:323-e
  • 予算区分:技会委託 食品安信プロ
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:小関成樹、山本和貴
  • 発表論文等:Koseki, S.,Yamamoto, K. (2006) Int. J. Food Microbiol. 110(1):108-111