簡便かつ効率的な麹菌の胞子形成能の強化法
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要約
麹菌Aspergillus oryzae低胞子形成株の簡便かつ効率的な胞子形成能の強化法を開発した。グルコース・酵母エキス寒天培地に3% (w/v) となるようNaClを添加した培地で麹菌株を培養することにより、着生胞子数が増大する。
- キーワード:麹菌、胞子形成、寒天培地、NaCl濃度
- 担当:食総研・微生物利用研究領域・糸状菌ユニット
- 連絡先:電話029-838-8077
- 区分:食品試験研究
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
麹菌Aspergillus oryzaeを実験室で取り扱う場合、胞子懸濁液を調製して胞子密度を測定し、一定量を培地に接種することで再現性の高い培養を行うことができる。ところが、菌株によっては胞子形成が貧弱な場合があり、その胞子数の確保が問題となっている。そこで、このような麹菌低胞子形成株からの効率的な胞子形成能の強化法を開発した。
成果の内容・特徴
- グルコース・酵母エキス寒天培地(GYA;2% (w/v) グルコース、0.5% (w/v) 酵母エキス)及び、これにNaClを3、6、9% (w/v) となるように添加した培地を作製した。各培地は9cmシャーレに25ml注ぎ入れて調製した。麹菌供試菌株7株の胞子をこれらの培地の中央に接種し、30℃で5日間培養して巨大コロニーを形成させ、コロニー径を計測した。
- コロニー上に無菌水を添加して、コンラージ棒で胞子を懸濁した後、滅菌処理した不織布を用いて懸濁液をろ過し、胞子懸濁液とした。胞子数を血球計算盤を用いて計数した。
- 表1に示すように、供試した7株の麹菌の生育については、各々3% (w/v) NaCl添加にてコロニー径が最大となり、3% (w/v) NaCl付近が増殖至適塩濃度であった。
- GYAにおいて胞子形成が貧弱な供試5菌株(総胞子数1.6×106以下)の全ての株が、3% (w/v) NaCl添加の場合に着生胞子数が最大となり、総胞子数はNaCl無添加の場合の約2~24倍になった(図1)。6% (w/v) NaCl以上では総胞子数は低下した。また、GYAにおける高胞子形成株(総胞子数19×106以上)は、供試した2菌株共に3% (w/v) NaClにおいて上記とは逆に胞子数が減少した。
- 以上のことから、麹菌の低胞子形成株は、GYAに3% (w/v) NaClを添加することにより、効率的に胞子を調製することができる。
成果の活用面・留意点
本方法は胞子形成が貧弱な麹菌株について、実験室レベルで簡便かつ効率的に多量の胞子を形成させることを目的に開発した。実用レベルでは、蒸米に木灰を添
加した培地での培養により胞子を形成させる方法が一般的である。また、本方法は低胞子形成株に対して有効な方法であり、高胞子形成株では胞子形成率が低下
する傾向がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:バイオテクノロジーを利用した新食品素材の生産技術の開発及び生物機能の解明・利用
- 課題ID:313-e
- 予算区分:バイオリサイクル
- 研究期間:2002~2006年度
- 研究担当者:楠本憲一、鈴木聡、柏木豊
- 発表論文等:楠本ら(2007)食品総合研究所報告(印刷中)