ビフィズス増殖に効果的なミルクオリゴ糖成分の製造方法

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要約

ヒトミルクオリゴ糖中のビフィズス因子と推定されるラクトNビオースI(LNB)の調製方法として、スクロースとGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)を原料とする方法を試みたところ、660 mMスクロース、600 mM GlcNAcから520 mM(200 g/L)のLNBが生成した。

  • キーワード:ミルクオリゴ糖、ビフィズス菌、ラクトNビオースI
  • 担当:食総研・食品バイオテクノロジー研究領域・酵素研究ユニット
  • 連絡先:電話029-838-8071
  • 区分:食品試験研究
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

人乳中に含まれるヒトミルクオリゴ糖は、母乳栄養乳児の腸管内に速やかにビフィズス菌寡占状態の菌叢を形成させることが古くから知られている。しかしながら、そのメカニズムについては長年明らかにされていなかった。今回ビフィズス菌のもつ新規なガラクトース代謝経路の解析からミルクオリゴ糖に含まれるラクトNビオースI(LNB)構造により増殖が誘導される仮説を発表した。さらに、LNBの酵素的大量調製法を検討することにより食品産業への応用を図ることを目的とした。

成果の内容・特徴

  • ラクトNビオースホスホリラーゼを中心とする新規なガラクトース代謝系をビフィズス菌ゲノム中に見いだした。その特異性からヒトミルクオリゴ糖(図1)中に含まれるLNB構造がビフィズス因子として作用することを骨子とした仮説を発表した(図2)。
  • ビフィズス菌由来の酵素を用い、安価な原料を用いてLNBを製造する方法を二種類考案した。両者のうち四種類の酵素を用いて砂糖とNアセチルグルコサミンを原料としてLNBを調製する方法が実用的であった(図3)。
  • 反応液を酵母で処理してLNBとGlcNAc以外の糖を除去した後晶析操作を行うことによりLNBを単離することに成功した。この結果によりスケールアップ可能な生産方法を確立した(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 本研究で調製されたLNBは、従来の市販オリゴ糖と比較してより強いビフィズス菌増殖活性を持つことが期待される。
  • 本成果を活用するにあたり、原料の選定あるいは酵素の製造方法の開発などによる、さらなるコストダウンを検討する必要がある。
  • LNB製造バイオリアクターの構築が今後の課題である。

具体的データ

図1 ヒトミルクオリゴ糖の構造図2 ビフィズス菌増殖に関するラクトNビオース仮説

図3 スクロースとGlcNAcを原料としたラクトNビオースIの調製方法

図4 ラクトNビオースIの大量調製

その他

  • 研究課題名:バイオテクノロジーを利用した新食品素材の生産技術の開発及び生物機能の解明・利用
  • 課題ID:313-e
  • 予算区分:新技術・新分野
  • 研究期間:2005~2009年度
  • 研究担当者:北岡本光
  • 発表論文等:1)Kitaoka et al. (2005) Appl. Environ. Microbiol., 71 (6):3158-3162
    2)北岡、西本 (2007) Milk Science, 55 (3):171-174