無触媒メチルエステル化法による廃食用油からのバイオディーゼル燃料製造
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要約
常圧の条件で過熱メタノール蒸気を油脂と接触させることにより、アルカリ触媒を用いることなく動植物油脂から脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル燃料)を製造する。アルカリ触媒を除去するための精製工程が不要であるためコスト低減が可能となる。
- キーワード:無触媒、脂肪酸メチルエステル、廃食用油、バイオディーゼル燃料、過熱メタノール蒸気
- 担当:食総研・食品工学研究領域・反応分離工学ユニット
- 連絡先:電話029-838-7323
- 区分:バイオマス
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
動植物油脂を軽油代替燃料とするためには、その粘度を軽油に近いレベルにまで低下させる必要があるが、現状の技術としては、アル
カリ触媒(水酸化ナトリウムや水酸化カリウム)を用いた脂肪酸メチルエステル(Fatty Acid Methyl Ester:
FAME)への変換が主流である。この場合、反応後にアルカリ触媒を除去するための精製工程が必要であり、コスト低減の障害となっている。また、遊離脂肪
酸はアルカリ触媒と反応して石けんを生成するため、従来のアルカリ触媒法を用いて廃食用油等の遊離脂肪酸を含む脂質を処理する際には、前処理として遊離脂
肪酸を除去する脱酸工程が必要である。これらの問題を克服するため、触媒を用いることなくFAME(バイオディーゼル燃料)を製造する技術を開発する。
成果の内容・特徴
- 常圧の条件下で過熱メタノール蒸気を反応槽に吹きこむことにより、気泡と油脂との界面でのエステル交換反応(FAMEの生成)を促進させる。生成したFAMEは未反応のメタノール蒸気とともに反応槽から流出し、冷却器により凝縮され回収される(図1)。回収された反応生成物から、メタノールを除去することにより、グリセリンが相分離し、FAMEを主成分とする製品(FAME含有率:80~95%)が得られる。
- 図2および図3に
は、ベンチスケールの反応装置に200
gのパーム油を仕込んで反応を行った際の、反応槽から流出した反応生成物および反応槽内における各成分の質量をそれぞれ示した。反応の進行とともに反応槽
内のトリグリセリドが減少するとともに、FAME含量80%以上の反応生成物が反応槽外に流出し、反応時間300
minの時点で原料の半分近くがFAMEとして回収されていることが分かる。また、反応槽内におけるFAMEの蓄積は観察されず、生成したFAMEは直ち
に反応槽外に流出していた。
- 本研究で開発した方法においては、触媒を除去するための精製工程が不要となるため、バイオディーゼル燃料を製造する際のコス
トが大幅に削減されるものと期待される。ベンチスケールの反応装置での結果をもとに、この方法を年間生産量5000
t規模の装置に適用した場合を想定して生産コストの試算を行ったところ、45.5円/kgとなった(アルカリ触媒を用いた方法での、文献値は75.2円
/kg)。
- 本研究で開発した方法においては、遊離脂肪酸も併せてFAMEに変換することができ(オレイン酸を原料とした際の反応生成物中のFAME含有率は74%)、しかも反応速度が大きい(表1)。このため、廃食用油に適用した際に、遊離脂肪酸を除去するための脱酸工程が不要となる上、歩留まりが最大で4%程度向上するものと期待される。
成果の活用面・留意点
- 反応の効率化に向けて、油脂と過熱メタノール蒸気との接触機構の改良や運転条件の最適化を、反応速度論的な解析に基づいて検討する必要がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:バイオディーゼル燃料の生産技術の開発
- 課題ID:224-c
- 予算区分:委託プロ(バイオマス(変換技術))
- 研究期間:2007-2008年度
- 研究担当者:鍋谷浩志、ハギ原昌司、相良泰行(東大)、荒木徹也(東大)、山根浩二(滋賀県立大)、後藤雅史(鹿島建設)、多田羅昌浩(鹿島建設)、宮野寛(鹿島建設)、倉持和博(鹿島建設)、芋生誠(鹿島建設)、吉村美毅(鹿島建設)、佐藤隆裕(鹿島建設)、小川浩司(鹿島建設)
- 発表論文等:Joelianingsh et al.(2007)Journal of Chemical Engineering of Japan, 40(9):780-785