エノキタケFv-1株によるセロオリゴ糖の直接エタノール発酵

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要約

エノキタケFv-1株は、セロオリゴ糖をグルコースと変わらない高い変換効率で直接エタノールに変換できる。この時、セロオリゴ糖はβ-グルコシダーゼにより単糖にまで分解されて代謝されている。

  • キーワード:エノキタケ、セロオリゴ糖、連結バイオプロセス(Consolidated bioprocessing (CBP))
  • 担当:食総研・生物機能利用ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8063
  • 区分:バイオマス
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

バイオ燃料製造では、食料と競合しないリグノセルロースを原料としたエタノール生産技術の開発が望まれている。現在の主流な方法である酵素糖化法では、エタノール製造コストに占める糖化酵素の価格が高いことが問題である。そこで、糖化酵素の生産と、エタノール生産能の両方を持つエノキタケFv-1株を用いて、バイオマスを直接エタノールに変換することにより、糖化酵素を使用しないエタノール製造技術「糖化発酵連結バイオプロセス (CBP)」の開発を目指している。そこで、セルロース由来のオリゴ糖を原料として、エノキタケFv-1株のエタノール生産能力を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • エノキタケFv-1株は、糖化酵素を添加することなく、セロオリゴ糖(セロビオース、セロトリオース、セロテトラオース)をグルコースの場合とグルコースと変わらない高い変換効率でエタノールに変換する(図1)。
  • セロオリゴ糖のエタノール発酵時、β-グルコシダーゼ活性が増加したことから、エノキタケFv-1株の糖化発酵CBPによるエタノール生産では、糖化酵素としてβ-グルコシダーゼが生産されている(図1)。
  • セロオリゴ糖のエタノール発酵時、セロオリゴ糖は培養初期に消失し、単糖であるグルコースの産生が観察されることから、エノキタケFv-1株は、セロオリゴ糖をグルコースにまで分解し、利用していると考えられる(図1)。

成果の活用面・留意点

  • エノキタケFv-1株を用いた糖化発酵CBPバイオエタノール生産では、生産される糖化酵素の主成分は、エキソ型酵素であるβ-グルコシダーゼである。そこで多糖であるセルロースを原料とした場合には、糖化速度が下がり、エタノールの生産性が低下する可能性がある。
  • 市販のセルラーゼ製剤では、バイオマスの糖化時にβ-グルコシダーゼが不足していることが指摘されており、バイオマスの糖化では、別に製造したβ-グルコシダーゼ製剤を混合している。エノキタケを用いることで、β-グルコシダーゼを混合する必要がなくなり、バイオエタノール生産時の糖化酵素のコストを削減できる。

具体的データ

図1 エノキタケによるセロオリゴ糖のエタノール発酵

その他

  • 研究課題名:担子菌によるwhole cropの直接エタノール発酵技術の開発
  • 課題ID:224b
  • 予算区分:委託プロ(バイオマス)
  • 研究期間:2007年~2009年度
  • 研究担当者:金子哲、水野亮二、一ノ瀬仁美、前原智子
  • 発表論文等:Mizuno R. et al. (2009) Biosci. Biotechnol. Biochem. 73(10):2240-2245