腸内フラボノイド代謝改善食品の開発のためのエコール産生性評価方法の開発

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要約

イソフラボンは、腸内フローラによって代謝され強いエストロゲン様作用を示すエコールに変換される。エコールの産生を高める食品を腸内フラボノイド代謝改善食品の一つと位置付け、その開発に資するためのエコール産生評価法である。

  • キーワード:エコール、イソフラボン、腸内フローラ、腸内フラボノイド代謝改善食品
  • 担当:食総研・食品機能研究領域・機能生理評価ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8089
  • 区分:食品
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

イソフラボンは大豆に含まれ、種々の生活習慣病予防効果が期待されるフラボノイドの一種である。大豆イソフラボンの一つであるダイゼインは、腸内フローラ(腸内細菌叢)によって代謝され、エコール(equol)に変換される。変換されたエコールは、もとのイソフラボンよりもエストロゲン活性が強く、機能性が高い。しかし、エコール産生能は個人差が大きく、50~70%のヒトはエコール産生能が低いことが知られ、エコール産生に関与する腸内フローラの違いが産生能の差の原因と考えられている。腸内でエコールの産生を高める食品は新しいタイプの機能性食品(腸内フラボノイド代謝改善食品)として期待できる。そこで、成果情報では、腸内フラボノイド代謝改善食品の開発に利用可能なエコール産生性の評価方法を提供する。

成果の内容・特徴

  • 従来法では、糞便サンプルのエコール産生性測定には新鮮糞便を用いるため、測定は糞便サンプリング当日に限られ、エコール産生性評価においては糞便処理・測定時期の制約がボトルネックとなっている。嫌気性輸送培地にジメチルスルホキシドを加えて希釈したヒト糞便は、イソフラボン代謝活性を6カ月以上保持したまま保存可能であることを新たに見出した。この糞便試料を用いてin vitro でのイソフラボン代謝試験(図1)を行った。凍結保存処理を行ったヒト糞便希釈液に対して1%の食品成分を添加して嫌気培養すれば、アップルペクチン等の食品成分はエコール産生性を向上させ、グルコースは抑制することを示し(図2)、エコール産生性を向上させる食品の検索法として使うことができる。
  • マウスを用いた動物試験においてコレステロール添加した餌を与えたマウスでは非添加のマウスに比して消化管内容物のエコール濃度(図3)が低いことから、コレステロール添加した餌を与えて育てたマウスがエコール低産生性マウスとなり、食品成分のエコール産生能の評価系の一つとして活用し得る。

成果の活用面・留意点

  • 開発されたエコール産生性評価方法は、腸内フラボノイド代謝改善食品(エコール産生性向上食品)検索方法として使用できる。
  • エコール産生性が期待される食品成分については、動物試験やヒト試験を活用してその効果を検証する必要がある。エコール低産生性マウスは、エコール低産生性状態を改善させる食品成分の評価に活用することができる。
  • 今回開発したエコール産生性を向上させる食品の検索法と食品成分のエコール産生能の評価系は、テーラーメイド食品開発の基盤的技術の一つとして活用し得る。

具体的データ

図1 エコール産生量の測定方法の概要

図2 1%食品成分を添加したin vitroでのイソフラボン代謝試験例

図3 コレステロール添加食給餌マウスの盲腸内容物のエコールアグリコン濃度

その他

  • 研究課題名:イソフラボン等を最適に摂取するための腸内フローラの制御法の開発
  • 中課題整理番号:312e
  • 予算区分:基盤、委託プロ(食品プロ)
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:田村 基
  • 発表論文等:1) Tamura M. et al. (2009) Antonie Van Leeuwenhoek 96(4) :621-626 2) Tamura M. et al. (2009) Nutr Res 29(12) :882-887. 3) Tamura M. et al. (2009) Food Sci Technol Res 15(2) :141-146.