コクゾウムシの越冬生態と水分の関係

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要約

コクゾウムシ成虫が玄米貯蔵庫で秋季に倉庫から脱出することを確認し、それを実験的に再現した。また、コクゾウムシ成虫は水を与えると越冬が可能であることを明らかにした

  • キーワード:コクゾウムシ、貯穀害虫、越冬、米貯蔵
  • 担当:食総研・食品安全研究領域・食品害虫ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8081
  • 区分:食品試験研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

貯蔵米の大害虫であるコクゾウムシの成虫は、秋季に倉庫から脱出して越冬すると古くから言われているが、詳細な情報はない。本研究ではコクゾウムシの周年での行動の変化を把握し、コクゾウムシ成虫の越冬行動と水分との関連性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 茨城県内の玄米貯蔵庫において、冬季のコクゾウムシ成虫(図1A)の活動を調査したところ、11月頃にベイトトラップ(玄米を金網に入れたもの)よりもスティッキートラップ(粘着板)で採集されるようになった(図2)。これは越冬前にコクゾウムシ成虫の生理状態が餌探求型から越冬場所探索型にシフトしたためだと思われる。また、4月頃から越冬を終えた成虫が再び餌探求型にシフトし、ベイトトラップで成虫が採集された。冬季には貯蔵庫のそばに置かれているブロックの下などから越冬している成虫を採集できた。
  • モデル試験としてスチール製倉庫に実験容器を置き、その容器内に卵~蛹約126頭、成虫32頭を含む玄米を入れた容器と水分を補給した隠れ場所を設置したところ、11月頃から米の入った容器から脱出する成虫が観察された(図3)。
  • このコクゾウムシ成虫の越冬行動と水分との関連性を明らかにするために、コクゾウムシ、コクゾウムシと同属近縁種のココクゾウムシ(成虫では越冬できないと言われているが詳細な情報はない)、別属のコクヌストモドキ(成虫が樹皮下で越冬することが確認されているが貯蔵庫内での越冬率は不明;図1B)の成虫の冬季の生存率を、水を与えた条件と水を与えない条件で調査した。一実験区当たりの成虫は30頭で、水は管瓶を加工した給水器で与え、成虫の餌として玄米を設置した。コクゾウムシでは水を与えた場合は2/3程度が越冬できたが、水を与えなかった場合は3月の調査ですべての成虫が死亡していた。ココクゾウムシは水の存在に関わらず、2月の調査ですべての成虫が死亡していた。コクヌストモドキでは水の存在に関わらず、少数が越冬した。コクゾウムシとコクヌストモドキではその後、一部の成虫は生存し続け、1年以上生存するものもいることが明らかになった(図4)。

成果の活用面・留意点

  • コクゾウムシが貯蔵庫を脱出しようとする行動や水分を要求する特性を利用した殺虫法の開発が可能である。
  • 水分を与えると越冬が可能である理由は現時点で不明である。

具体的データ

図1 コクゾウムシ成虫(A)とコクヌストモドキ成虫(B)

図2 茨城県内の玄米貯蔵庫におけるコクゾウムシ成虫のトラップ別周年捕獲数

図3 スチール製倉庫内におけるコクゾウムシ成虫の生存数と生息場所

図4 水分を与えた場合の3種の貯穀害虫の生存率

その他

  • 研究課題名:食品害虫の生態解明とそれを利用した防除技術の開発
  • 中課題整理番号:323e
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:今村太郎、宮ノ下明大、松阪 守(国際衛生株式会社)、峯岸利充(国際衛生株式会社)、石向 稔(国際衛生株式会社)、中北 宏(つくば防虫協議会)
  • 発表論文等:松阪ら(2009)家屋害虫、31(1): 27-36.