微粒化米粉の粉体特性

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要約

気流式粉砕機等を用いて調製した平均粒径が3~30μmの微細な米粉の流動性は伝統的な米粉と比較して低く、利用時には加工機械内部における詰まりに注意する必要がある。

  • キーワード:ジェットミル、ハンマーミル、Carrの流動性指数、粒子形状
  • 担当:食総研・食品工学研究領域・製造工学ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8029
  • 区分:食品試験研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

近年、米粉利用への関心の高まり及び微粉砕技術の進展により、微粉砕による新たな米粉の用途創出への期待が高まっている。しかしながら粉体は粒子径が小さくなるにしたがい流動性が低下することが指摘されており、微粉砕された米粉を使用する際には加工機械内部におけるブリッジ、ラットホールなどの粉体の架橋・閉塞や、取扱い時における飛散が発生する危険性が懸念される。これらの問題に対処するための加工機械の仕様・性能選定の指標として、微粉砕された米粉の流動性及び噴流性の評価が求められている。

成果の内容・特徴

  • 粉砕条件を調整することにより、気流式粉砕機(ジェットミル)にて平均体積粒径約3、15、30μm、衝撃式粉砕機(ハンマーミル)にて平均体積粒径約30、60、100μmの粳米(コシヒカリ)玄米および精米ならびに糯米(マンゲツモチ)精米を原料とした米粉を調整した(図1)。
  • 平均粒径が約15μmまでは粒径が小さくなるにしたがい、米粉の流動性は低下するが、平均粒径15μm以下では米粉は取扱い中に凝集粒子塊を形成するため流動性が低下しない(図2)。
  • 同程度の平均粒径の米粉であれば、ジェットミルにて粉砕された米粉の流動性はハンマーミルにて粉砕されたものと比較して高く、米粉の粉体特性は粉砕方法に影響される。粒子形状は粒径が小さくなるに従い丸みを帯びる(図3)。
  • 平均粒径30μmm以下に微粉砕された米粉の流動性は、上新粉と比較すると極めて低く(図2)、従来の米粉を原料として使用している加工ラインにおいては問題を生じる危険性が懸念されるが、小麦粉と比較すると流動性は同程度であり、小麦粉を原料として使用している加工ラインに、代替原料として微粉砕された米粉を使用する際には問題が発生する可能性は低い。
  • 平均粒径30μmに微粉砕された米粉の噴流性は従来の米粉と明確な違いは見られないが、分散性は向上する。微粉砕された米粉には強い発塵性が懸念されることから作業者による吸引や粉塵爆発などに対して注意を払う必要がある。

成果の活用面・留意点

  • 微粉砕された米粉を加工食品原料として用いる際の機器の仕様選定において、機器内面にコーティングが必要であるかどうか、振動ホッパーが必要であるかどうかなどの判断に、流動性指数のデータを活用することができる。
  • ここで示された流動性指数は水分が10~14%の米粉についてのものであり、高水分の米粉を用いる際には別途検討が必要である。

具体的データ

図1 米粉の粒度分布(粳米玄米)

図2 粉砕方法および平均粒径による米粉の流動性指数の変化ならびに上新粉および小麦粉(市販品)の流動性指数

図3 粉砕方法および平均粒径による米粉の粒子形状の違い(粳米精米)

その他

  • 研究課題名:先端技術を活用した食品の加工利用技術の開発
  • 中課題整理番号:313d
  • 予算区分:食品ナノ
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:岡留博司、竹中真紀子、五月女格、五十部誠一郎
  • 発表論文等:五月女格ら(2009)日本食品工学会誌 10(2):95-106