青果物のスーパー・パーシャルシール鮮度保持包装技術

要約

 包装袋のシール部微細孔に加え、レーザー光により袋表面に微細穿孔を開けることで、これまで難しかった輸出など長期間にわたる鮮度保持が可能となった。その結果、ニラやネットメロン等を航空便と同等の品質で船便輸送することが可能となった。

  • キーワード:微細穿孔、鮮度保持包装、輸出、レーザー光
  • 担当:食総研・食品工学研究領域・食品包装技術ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8037
  • 区分:食品
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい


 青果物は、流通している時でも生きており、呼吸や水分蒸散等の生命活動を行っている。青果物の品質を保つためには、温度、湿度、酸素濃度、二酸化炭素濃度等を最適に制御する必要がある。青果物を包装し、湿度とガス環境の最適制御を行うことにより鮮度保持期間を数倍延長できるが、高品質な青果物の輸出に対応できる技術の開発には至っていないのが現状である。このため、現在広く使われている「パーシャルシール鮮度保持包装技術」をキーテクノロジーとして、最近、食品包装の分野でも用いられるようになってきたレーザー尖孔加工を、ガス透過性の制御を目的として青果物のフィルム包装に導入することにより、従来の鮮度保持包装技術では対応が難しかった、包装時に最適なガス透過性を付与できる「スーパー・パーシャルシール鮮度保持包装(SPS)」装置を新たに開発して、青果物輸出の促進に資することを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 新たに開発したSPS包装装置は、青果物の種類や包装内重量に応じて、フィルムに開ける孔の大きさや数を瞬時にプログラム制御することで、ガス透過性を任意に調整することができる(図1)。
  • レーザー孔を併用したSPS包装では、開孔数に応じて袋内のガス濃度を細かく調整することができ、従来のニラのパーシャルシール包装に比べて、袋内の酸素濃度を10倍以上にまで高めることが可能である(図2)。
  • 従来のJISによる強度試験では、袋全体のヒートシール強度を正確に測定できないが、微差圧計により袋内の圧力をモニタしながら破袋するまで一定速度で袋内にガスを封入し、破袋時の最大圧力を計測するという方法では、袋全体のヒートシール強度を測定可能である(図3)。
  • PS部のヒートシール特性をCFD(数値流体力学)により解析することで、環境温度やローラーの温度変動等がシール強度に及ぼす影響を明確にできる(図4)。

成果の活用面・留意点

  • 海外輸送では国内輸送時とは異なり青果物の蒸散による袋内水滴付着で微細孔部の詰まりがかなり見られるが、レーザー孔の付加により、これを軽減することができる。
  • 今回開発したレーザー尖孔装置を併用した包装方法は、ガス透過性が飛躍的に向上し、ガス透過性の調整も精密化されたことから、これまで実現できなかったネットメロンや高糖度トマトなど多くの青果物に対応した海外輸出用の鮮度保持包装法として活用できる。
  • CFDによるヒートシール面シミュレーションによりローラーの最適な温度設定や精度の管理が行える。
  • 包装現場における包装機の運転条件(環境温度や運転速度など)は試験機とは必ずしも同じではないのでシール特性のばらつきに留意する必要がある。

 具体的データ

図1 レーザー尖孔装置を併用したSPS  包装装置

図2 SPS包装における開口数の違いによる袋 内酸素濃度の変化

図3 SPS包装加圧時の袋内圧力変化

図4 微細孔部のヒートシール時における温度変化シミュレーション

その他

  • 研究課題名:農産物・食品の流通の合理化と適正化を支える技術の開発
  • 中課題整理番号:313c
  • 予算区分:実用技術
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:石川豊、永田雅靖、鈴木芳孝(高知農技セ)、宮崎清宏(高知農技セ)
  • 発表論文等:1) 石川豊ら(2009)日本包装学会誌 18(4):271-279
     2) 宮崎清宏ら(2010)日本食品科学工学会誌 57(7):310-313
    3) 鈴木芳孝ら(2010)日本包装学会誌 19(3):215-222