発芽玄米のマウスの不安軽減効果

要約

発芽玄米の摂取により新奇環境に曝された時のマウスの移動距離が短くなり、発芽玄米の摂取はマウスの環境順化能力を高める。

  • キーワード:発芽、GABA、玄米、オープンフィールドテスト
  • 担当:食総研・食品機能研究領域・栄養機能ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8083
  • 区分:食品
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい 

近年、社会構造が複雑になり、過剰なストレスにより、うつ病やパニック症候群などの精神疾患を罹患する人口が多くなっている。このような背景から、精神疾患の予防や改善が期待される食品の開発が望まれている。一方で、米は自給率が高い農産物である。そのため、米の更なる活用は、自給率の向上に不可欠である。本研究は、精神疾患の予防のための食品の開発に寄与することを目的とするとともに、米の自給率向上のために、発芽処理により機能性を付加した米の機能性を、繰り返しのオープンフィールドテストにより明らかにする。

成果の内容・特徴

  • マウスは新奇の環境に曝されると、不安状態から活発に活動し、移動距離は増加し、長時間同じ環境に曝され、繰り返し試行されることで、移動距離は減少する。新奇環境に曝された時の、マウスの情動変化を評価する手法であるオープンフィールドテストを繰り返し試行することにより、発芽玄米(30分、72時間)を摂取したマウスは、2、4、7週間目で新奇環境に曝された直後の移動距離が精白米に比べて有意に減少する。このことから発芽玄米の摂取は、マウスの新奇環境への順化を高めているものと推察される(図1)。
  • 一方、発芽玄米と同程度の量のγ-アミノ酪酸(GABA:発芽玄米で顕著に増加することが知られている)を添加した飼料(GABA0.02%)では、同様の効果は認められない(図2)。このことから、マウスの新奇環境への早期順化効果は、GABA単独によるものではなく、玄米の発芽処理により生成された成分または玄米に既に含まれている成分と複合的に作用した結果であると考えられる。

成果の活用面・留意点 

  • 米だけでなく、ヒエやアワなどの雑穀やこれまであまり利用の多くない蓮の種子などの食用の種子にも、発芽処理をすることで同様の効果を期待できる可能性がある。
  • 発芽玄米の機能性が明らかになったことで、米の消費拡大が期待できる。

具体的データ

図1 精白米、玄米または発芽玄米を20%含む飼料を摂取したマウスのオープンフィールドテストにおける移動距離の変化(n=10)   *は精白米に対する有意差を示す(*:p<0.05、**:p<0.01)

図2 発芽玄米と同程度のGABAを含む飼料(0.02%)を摂取したマウスのオープンフィールドテストにおけるマウスの移動距離の変化(n=10)

(白井展也)

その他 

  • 研究課題名:食品の持つ機能性の利用・制御技術及び機能性食品の開発
  • 中課題整理番号:312f          
  • 予算区分:委託プロ(信頼機能プロ)
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:白井展也、鈴木平光(女子栄養大)、鈴木啓太郎、大坪研一(新潟大)
  • 発表論文等:Shirai et al. (2010) Food Sci. Technol. Res., 16 (6) 621-626.