効率的な消費者の情報理解のための情報提示方法
要約
- インターネットで情報を開示するときに、消費者自身が情報に対してボタンクリックなどの能動的な態度をとるように工夫すると、情報の理解が促進され、その理解に基づいた商品の価値判断が促される。
- キーワード:消費者行動、支払い意志法、インターネット
- 担当:食総研・食品機能研究領域・食認知科学ユニット
- 代表連絡先:電話029-838-7357
- 区分:食品
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
インターネットによる情報開示が進む現在、消費者がボタンクリックなどによって情報に対して能動的にアプローチするような工夫も可能である。一方で、作り手側はそのような工夫がどの程度、消費者の理解や、商品価値の評価に影響を与えるかのエビデンスがなければ、労力をかける価値があるか判断しがたい場合も多い。そこで、カーボンフットプリントや原材料に関する説明表示を、能動的に検索することが商品の価値にどのように影響するのかを検討する。
成果の内容・特徴
- 151名の実験参加者が、チョコレート、ポテトチップス、飴、ジュースのいずれかに関する情報をコンピュータディスプレイ上に提示されるのを観察し、その商品にいくら払って購入するかを尋ねる課題 (支払い意志法;willingness to pay; WTP) を行なっている。
- 実験参加者は、情報が予め画面に全て表示されている条件(受動検索条件)、もしくは知りたい情報に関してボタンクリックして検索する条件(能動検索情報:図1参照)のいずれかに参加している。
- 提示される情報は、カーボンフットプリント値(CF値)に関する情報に加え、原材料、内容量、など従来の食品表示の内容も含まれている。
- 図2に実験によって得られたWTP値の標準得点を示す。この図は受動検索条件では、CF値はWTP値に影響を与えないが、能動検索条件ではCF値が小さいほどWTP値が大きくなることを示している。
- この結果は、能動検索の場合は使用炭素量が少ない、環境にとってより好ましいと考えられる商品が、高く評価されるが、受動検索では同じ情報を与えても商品の価値判断に影響を与えないことを示している。つまり、消費者は情報に対して積極的な態度をとった場合には情報の理解が促進され、それが商品の評価に反映されやすいことを示している。
成果の活用面・留意点
- インターネットのような媒体において、消費者の情報に対する態度が商品価値に影響を与える。
- 先行研究でも能動的な態度が商品価値に影響を与えることを示したが、今回はCF値の負の関数として支払い意志が変化したことから、消費者の態度によって情報理解が促進された上で商品価値が変化することを見出している。
- 携帯端末などにおける能動的な態度の誘導などが効果的かどうかなど、詳細の検討は今後の更なる実験的な検討が必要である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:食品安全に係わるコミュニケーション手法と評価方法の開発
- 中課題整理番号:321b
- 予算区分:科研費基盤(B)
- 研究期間:2009~2010年度
- 研究担当者:和田有史、木村敦、岡 隆(日本大)、檀一平太、鎌田晶子(文教大)、
- 蔡東生(筑波大)
- 発表論文等:1) Kimura, Wada et al, 2008, Appetite, 51 (3), 628-634.
2) Kimura, Wada et al, 2010, Appetite, 55(2), 271-278.