非澱粉性多糖類の澱粉消化性に対する抑制効果

要約

非澱粉性多糖類は、澱粉ゲルおよび澱粉懸濁液に添加すると澱粉の消化を抑制する。その効果は非澱粉性多糖類の種類間で違いが認められるが、物理特性との直接的な関連性は認められない。

  • キーワード:澱粉消化性、非澱粉性多糖類、粘度、粘弾性
  • 担当:食総研・食品機能研究領域・食品物性ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8031
  • 区分:食品
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

食品に含まれる澱粉の消化酵素による分解性を抑えることによって、食後の血糖値上昇を抑制できることが知られている。そこで、食品のモデル系として澱粉と非澱粉性多糖類(NSP)の混合ゲルおよび混合懸濁液を用いて、NSP の共存が澱粉消化性に及ぼす影響と物理特性の変化が澱粉消化性の抑制作用に与える影響を明らかにすることで、澱粉消化性に対する抑制効果をもつ食品中の成分を見出し、食品の高機能化につながる加工技術提案のための知見を得る。

成果の内容・特徴 

  • 米澱粉とコンニャクグルコマンナン(KG)、キサンタンガム、および寒天を混合して調製したゲルは、NSPを添加していない対照試料の澱粉ゲルよりも澱粉分解酵素による分解率が有意に低く、その抑制効果には濃度依存性が認められる(図1)。
  • 澱粉ゲルに添加したNSPの澱粉消化性に対する抑制効果は、同じ添加濃度では寒天よりもキサンタンガムやKGの抑制効果が高い。
  • ゲル中に含まれる澱粉の消化性は、ゲルの動的粘弾性(図2)や破断特性との間に直接的な相関関係は認められない。一方、ゲルの破砕後の粒度が小さくなると、NSPがゲルの中から浸出し、溶液の粘度が上昇するために澱粉消化性の抑制効果が高まる。
  • キサンタンガム、グアガム、ペクチン、KGを添加した澱粉の懸濁液でも、すべてのNSPに澱粉消化性の抑制効果が認められる。その中でも、キサンタンガムの効果が顕著に高い(図3)。透析膜を用いてNSP共存下での透析外液のグルコース量を測定し、グルコース単体の量と比べると、キサンタンガムの共存下ではグルコース量が少ないことから(図4)、グルコースとキサンタンガムの相互作用により拡散が遅くなり、分解が抑制されることが推察される。
  • 添加したNSPには増粘効果があり、特にKGを澱粉懸濁液に添加すると粘度は著しく上昇する。一方、KGの澱粉消化性の抑制効果はキサンタンガムより劣り、グアガムおよびペクチンと同程度である。
  • 懸濁液の粘度と澱粉消化性には直接的な関連性は認められず、NSPの澱粉分解抑制作用の要因は粘度上昇によるものだけではなく、澱粉とNSPの相互作用の関与が示唆される。

成果の活用面・留意点 

  • 食品のテクスチャー制御に使われるNSPの澱粉消化性に対する抑制作用とNSPの種類による効果の違いが明らかになり、食後の血糖値上昇を抑えるような澱粉系加工食品の開発に寄与する知見である。
  • 澱粉とNSPの混合懸濁液を調製した際に、キサンタンガムが示す高い澱粉分解抑制効果の作用機構については、今後分子間の相互作用の解析が必要である。

具体的データ

図1. NSPを添加した澱粉ゲルの澱粉分解率 コンニャクグルコマンナン(KG:0.1、0.2%)、キサンタンガム(Xa:0.1、0.2、0.5%)、寒天(Ag:0.1、0.2、0.5、1.0、1.5%)を30%の米澱粉に添加したゲルを使用。

図2. NSPを添加した澱粉ゲルの 貯蔵弾性率と澱粉分解率の関係

図3. NSPを添加した米澱粉懸濁液の澱粉分解率 キサンタンガム(Xa)、グアガム(Gu)、ペクチン(Pe)、コンニャクグルコマンナン(KG)を5mg/mlの濃度で添加。

図4. 各種NSP共存下での透析外液中の グルコース量の比較 キサンタンガム(Xa:1、3、5mg/ml)、グアガム(Gu: 1、3、5mg/ml)、コンニャクグルコマンナン(KG: 1、3、5mg/ml)、ペクチン(Pe: 5、10mg/ml)をグルコース+酵素反応液に添加。

その他 

  • 研究課題名:食品の持つ機能性の利用・制御技術及び機能性食品の開発
  • 中課題整理番号:312f
  • 予算区分:科研費、委託プロ(食品プロ)
  • 研究期間:2007~2010年度
  • 研究担当者:佐々木朋子
  • 発表論文等:1)Sasaki T. et al. (2011) Food Chem. 127(2):541-546