凍り豆腐とそのタンパク質・イソフラボン成分が有する脂質代謝調節作用の解明

要約

凍り豆腐を摂取したラットの血清脂質濃度は低下する。その作用は、凍り豆腐中のタンパク質成分が肝臓での脂質合成を抑制するために生じる。一方、イソフラボン成分は脂質代謝にほとんど影響しない。

  • キーワード:大豆食品、肝臓、脂質代謝、DNAマイクロアレイ解析
  • 担当:食品機能性・代謝調節利用技術
  • 代表連絡先:電話 029-838-8041
  • 研究所名:食品総合研究所・食品機能研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

大豆やその加工食品には、大豆タンパク質やイソフラボン等の機能性成分が含まれている。これらの成分は血中脂質濃度低下作用を示し、心臓病の予防や脂質代謝の改善に効果があると言われている。一般に、食品の機能性は特定の食品成分の作用から推測されているが、食品そのものの機能性と同一とは限らない。しかし、食品そのものが有する機能性の評価が必要である、との視点に立った研究はほとんど報告されていない。本研究では、食品そのものの例を凍り豆腐(高野豆腐)として、これを摂取したラットで脂質代謝調節作用が見られるかを確認し、その作用に関わる食品成分と作用機構を明らかする。

成果の内容・特徴

  • 4週齢の雄ラットを6群に分け、各群の食餌タンパク質含量を20%としたカゼイン食(C)、低イソフラボン大豆タンパク質食(S)、凍り豆腐食(T20)、凍り豆腐とカゼインのタンパク質が各10%の食餌(T10)、またはT20に相当する量のイソフラボン(0.012%)を添加したカゼイン食(CI)および大豆タンパク質食(SI)で2週間飼育すると、カゼイン群(C、CI)と比較して、大豆タンパク質群(S、SI)および凍り豆腐群(T10、T20)は体重増加量および血清脂質濃度が減少する(表1)。
  • DNAマイクロアレイとGOデータベース(Gene Ontology;各生物種の遺伝子関連情報をまとめ、用語等を統一して定義したもので、Web上で無料公開されている)を用いて、食餌の影響を受ける代謝系を遺伝子発現レベルで解析できる。肝臓では、凍り豆腐や大豆成分が含まれる食餌によって、主に脂質代謝系の遺伝子発現が変化する(表2)。
  • 表2にある「脂質代謝関連の生物学的プロセス(機能)」に含まれる遺伝子の発現量を個別に測定すると、カゼイン群と比較して大豆タンパク質群および凍り豆腐群で発現量が低下する遺伝子が多く存在し、その大半が脂質合成に関連する遺伝子である(図1)。したがって、凍り豆腐の脂質代謝調節作用は、豆腐のタンパク質成分に起因する。
  • 一方、食餌イソフラボン量に応じて血清イソフラボン濃度は上昇するが(表1)、血清脂質濃度(表1)および脂質代謝関連の遺伝子発現(図1)には影響が見られないため、凍り豆腐中のイソフラボンは脂質代謝には関与しない。
  • 大豆粉食で同様の動物試験を行い、DNAマイクロアレイデータを比較すると、凍り豆腐は大豆の機能性と正の相関があり、全般的に大豆より機能性が強化されている(図2)。

成果の活用面・留意点

  • DNAマイクロアレイ解析により、凍り豆腐の脂質濃度低下作用、および関与する成分(大豆タンパク質)と作用メカニズム(肝臓での脂質合成抑制)が明らかになる。
  • 本手法は、「成分」ではなく「食品」として摂取するときの機能性を明確に示すことができるため、食品中のどの成分が有効なのか、食品として摂取しても機能性は保たれるのか、等の検証が可能であり、大豆食品以外の機能性評価でも活用が期待される。
  • 本研究ではデータの標準化にパラメトリック法を用いているため、同じ標準化方式を適用すれば、異なる実験系のDNAマイクロアレイ解析データと直接比較が可能である。

具体的データ

表1~2、図1~2

その他

  • 中課題名:代謝調節作用に関する健康機能性解明と有効利用技術の開発
  • 中課題番号:310b0
  • 予算区分:委託プロ(機能性プロ、医食同源プロ)
  • 研究期間:2007~2012年度
  • 研究担当者:高橋陽子、小西智一(秋田県立大・生物資源科学)
  • 発表論文等:Takahashi Y. and Konishi T. (2011) J. Agric. Food Chem. 59(16):8976–8984