もち米の胴割を安価・簡易に検査する「もち米胴割粒透視器」
要約
もち玄米の胴割を簡易に目視判別するために、500-750nmの光を、米粒の長軸方向から斜めに照射することが有効なことを明らかにした。また、本成果を活用し、株式会社ケット科学研究所ともち米胴割粒透視器を共同開発し、2013年5月に製品化した。
- キーワード:もち米、玄米、胴割、亀裂、検知
- 担当:加工流通プロセス・先端流通加工
- 代表連絡先:電話 029-838-7991
- 研究所名:食品総合研究所・食品工学研究領域
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
もち玄米の胴割粒は潜在的な破砕粒であり、精米時の歩留りに悪影響を及ぼすだけでなく、餅においては粒のまま残って食感を悪化させる要因、赤飯やおこわではその外観を損なう不完全粒として最終製品の品質をも低下させる。このため、JAや農業生産法人等のもち米生産者及び流通業者においては、加工・流通前にもち玄米の胴割を検出し、その品質を管理する技術の開発が求められている。うるち玄米の胴割粒を目視で判別する手法は確立されているが、もち玄米は白濁しているため、目視で判別することは困難である。このため、もち米の胴割粒混入率は、玄米を精米して生じる破砕粒を計数して算出されているが、精米に時間と手間を要し、また商品の精米を経て事後的に胴割混入率が明らかになるという問題があることから、精米せずにもち玄米のまま胴割を検査する手法の開発が強く求められている。本成果は、もち玄米に関する(1)観察波長および(2)玄米に対する照明の方向が胴割の検出精度に及ぼす影響の検討と、その結果に基づいた、もち玄米の胴割を精米せず簡易に目視判別する技術を提供するものである。
成果の内容・特徴
- 波長500-750 nmの光を、もち米粒の長軸方向から照射することにより、胴割による亀裂を目視にて明確に検出できる(図1)。
- 図2に示す通り、米粒内に入射した光が、亀裂で乱反射するため、亀裂が明るい線として検出できると考えられる。
- 米の糠層には油脂及びタンパク質が含まれおり、これらの成分は400~500nmにおいて良く光を吸収する。一方、500nm以上の領域ではこれらの成分に特徴的な光吸収帯は存在せず、そのため糠層を透過し、亀裂で乱反射した光を観察することが可能と考えられる。
普及のための参考情報
- 普及対象:もち米生産者及び、JA・農業生産法人・流通業者等の米品質検査施設
- 図2に示す通り、米粒内に入射した光が、亀裂で乱反射するため、亀裂が明るい線として検出できると考えられる。
- その他
本成果を活用し、株式会社ケット科学研究所ともち米胴割粒透視器(図3)を共同開発し、2013年5月より1台37,000円で販売中である。本製品のトレイには米粒を50粒載せることができ、目視にて確認した胴割粒の数を2倍すれば、簡単に胴割粒の混入率を算出できる。本製品は持ち運びでき、またもち玄米をトレイに載せるのみで検査が可能なため、もち米の生産現場やもち米の品質検査施設における胴割粒の検出に活用できる。現在、胴割粒混入率の検査は、精米時に破砕粒を計数して行われているが、本製品はこれに替わり、精米前にもち玄米の品質を検査してその歩留まりと最終製品品質を向上させる手法として活用されることが期待される。なお、本製品は透明なうるち米の胴割検知にも適用可能である。
具体的データ
その他
- 中課題名:先端技術を活用した流通・加工利用技術及び評価技術の開発
- 中課題整理番号:330c0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2012~2013年度
- 研究担当者:蔦瑞樹、杉山純一、吉村正俊
- 発表論文等:
1) 蔦ら「もち米の胴割判別方法、胴割判別装置、および、プログラム」特願2012-198943
2) 吉村ら(2014)農業情報研究、23 (2)