2型糖尿病合併症バイオマーカーの同定とその検出方法
要約
糖尿病合併症の危険因子である終末期糖化産物(AGEs)を認識する受容体(RAGE)を固定化したビーズを開発し、新規バイオマーカーの同定と検出法の開発を行った。新規機能性評価手法への発展が期待される。
- キーワード:糖尿病合併症、RAGE、バイオマーカー
- 担当:食品機能性・機能性評価標準化技術
- 代表連絡先:電話 029-838-7991
- 研究所名:食品総合研究所・食品バイオテクノロジー研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
糖尿病合併症は、「生活の質(QOL)」の著しい低下を招くが、2型糖尿病合併症は食品による予防が可能である。一方、糖尿病合併症の危険因子である終末期糖化産物 (advanced glycation end products: AGEs)は、構造が多様でAGEs様活性を示す分子を広く検出する手法は確立されていない。
そこで、食品の2型糖尿病合併症予防効果を評価する手法の確立、および、新規バイオマーカーの検出を目指し、AGEsを認識する受容体 (Receptor for AGEs: RAGE)を固定したビーズを開発し、その有効性を明らかにする。
成果の内容・特徴
- RAGEを固定化したビーズを作製し、2型糖尿病発症マウスの血清と尿から、発症時に特異的なタンパク質を同定する(図1)。
- 血清から同定されたヘモペキシン(HPX)は、ヘム鉄を結合し、その複合体がRAGEに作用し細胞を活性化させる(図2)。
- 尿中から同定されたナプシンA (NP-A)は、高血糖刺激により細胞が障害を受ける前の段階で、近位尿細管上皮細胞からの分泌が亢進する。
- NP-Aは、2型糖尿病合併症のバイオマーカーとして有望である。
- 尿中の微量マーカーであるNP-AがRAGE固定化ビーズの濃縮効果により検出されたことは、RAGE固定化ビーズの微量マーカー検出における有効性を示す。
成果の活用面・留意点
- NP-Aは、組織が障害を受け放出される尿中アルブミンと異なり、高血糖などの刺激に反応して分泌量が亢進する可能性がある。そのため、2型糖尿病合併症(特に腎症)の発症前や初期バイオマーカー候補となり得る。
- RAGEビーズを活用することにより、従来法では検出限界以下である微量マーカーの検出手法の開発が期待される。
- 新規バイオマーカーの検出手法が確立されることにより、農林水産物・食品の2型糖尿病合併症予防機能を評価するキットの開発が期待される。
具体的データ
その他
- 中課題名:健康機能性に関する成分分析法及び評価法の開発と標準化
- 中課題整理番号:310a0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2011~2013年度
- 研究担当者:町田幸子
- 発表論文等:
1)町田ら「AGEを認識する分子」特許第5093711号 2012年9月28日登録
2)町田ら「糖尿病合併症マーカーとなり得る新規RAGEリガンド」特願2012-81577
3)町田ら「AGEを認識するリフォールディングされた分子」特許第4911575号 2012年1月27日登録