数値流体力学(CFD)の適用による包装容器内の通風効率改善

要約

青果物用包装容器における通風効率の改善において、数値流体力学(CFD)によるシミュレーションを導入することにより、実物による性能評価の大半を省略し、効率的に高性能な包装容器形状を見出すことができる。

  • キーワード:数値流体力学(CFD)、包装容器、通気孔、青果物
  • 担当:加工流通プロセス・先端流通加工
  • 代表連絡先:電話 029-838-7991
  • 研究所名:食品総合研究所・食品工学研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

段ボール箱を主体とした青果物の包装容器には、冷却やガス交換のために内部に十分な気流速を確保できる機能が求められることがある。このような機能を持つ包装容器を得るべく、様々な形状を実際に製作するためには大きな労力を要する。一方、空間における流体の挙動を解析する手法として、数値流体力学(CFD)がある。本研究では、CFDを用いてイチゴ用包装容器の内部空間における気流速を可視化するとともに、通気孔レイアウトの違いが内部空間における気流速に及ぼす影響を評価する。

成果の内容・特徴

  • 図1で示した包装容器(縦210×横290×高さ45.3(mm)、初期空間温度15.7°C)において片側の通気孔から21.5°Cの空気を流速1.2m/sで流入させた際の、イチゴを詰めたパック上層空間における温度変化を熱電対により計測し、CFDによる計算値と比較すると(実測とシミュレーションとの整合性確認)、双方の誤差は平均0.24°Cであり、CFDによるシミュレーションは実用可能な精度を有しているものと判断できる。
  • 図1で示した包装容器におけるイチゴパック上層空間の気流速をCFDにより可視化したものを図3に示す。この空間においては、気流が殆ど生じない部位が存在する可能性が考えられる。また、そのような部位は、通気孔の拡大によっても解消されないものと予測され、図1の包装容器における通気孔の数およびレイアウトでは通風効率の向上に限界があるものと判断できる。
  • 2における結果を踏まえ、包装容器妻面における通気孔を図1より1組増やした図4に示す包装容器を基本形態(通常レイアウト)として、通風効率の向上に関するシミュレーションを実施した場合、通常レイアウトではトレー周辺において気流速が小さい部位が存在するものと想定されるが(図5a)、包装容器妻面における通気孔を敢えて非対称に配置することにより(改良レイアウト)、トレー周辺における気流速を通常のレイアウトよりも大きくできる可能性が考えられる(図5b)。

成果の活用面・留意点

  • 流通現場における、品目や品種の特性の違いに起因する包装容器形状のアレンジの要望に即座に対応することができる。
  • 通気孔レイアウトの改良により通風効率が改善できれば、通気孔径を通常のものよりも小さくすることができ、包装容器の強度の向上が期待できる。
  • シミュレーションによって得られた形状に基づいて実際に包装容器を製作し、その性能を評価する際には、対象品目の品質への影響に関する評価を併せて実施する必要がある。

具体的データ

図1~5

その他

  • 中課題名:先端技術を活用した流通・加工利用技術及び評価技術の開発
  • 中課題整理番号:330c0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2013 年度
  • 研究担当者:北澤裕明、舩木達也(産総研)、中尾光博(鹿児島大)
  • 発表論文等:Kitazawa H. et al. (2012) Food Sci. Technol. Res., 18(4):525-534