「コシヒカリ新潟BL」の迅速判別手法の開発・分析キットの実用化
要約
米粒試料から直接DNAを抽出し、それを遺伝子検査試薬に加え保温するだけで、1時間以内に「コシヒカリ新潟BL」の真偽を判別することができる。本分析法を用いることで、「コシヒカリ新潟BL」の品種検査の迅速化・省力化が期待される。
- キーワード:品種判別、LAMP法、「コシヒカリ新潟BL」
- 担当:食品安全信頼・信頼性確保
- 代表連絡先:電話 029-838-7991
- 研究所名:食品総合研究所・食品素材科学研究領域
- 分類:普及成果情報
背景・ねらい
米の品種は、JAS法で義務づけられた精米・玄米だけにとどまらず、様々な米加工品にも表示され、消費者の商品選択の重要な指標となっている。また、米の流通加工事業者による製品の品質保証や、種苗の管理などにも品種の情報が利用されている。中でも新潟県産コシヒカリ(「コシヒカリ新潟BL」)は高値で取引されるため、品種の真偽を確かめる品種識別の需要が高いが、PCRを利用した従来の分析法では、通常全工程に4?5時間を要するため、直ちに、オンサイトで結果を確認する必要がある流通加工事業者などにとってはそのニーズを十分に満たせていない。そこで、LAMP(Loop-mediated isothermal AMPlification)法という新たな遺伝子検査法を利用して、「コシヒカリ新潟BL」の品種判別の迅速化・省力化を図る。
成果の内容・特徴
- 玄米・精米・炊飯米を粉砕なしに直接処理するDNA抽出工程(約10分)、DNAをLAMP検査液に加えた後63°Cで40分保温する遺伝子増幅工程、反応後の検査液の蛍光発色による結果判定の各工程からなり、全工程をあわせて1時間以内に分析が終了する(図1)。
- 試験管ミキサー、卓上簡易遠心機、ヒートブロック等の恒温器、UV照射器といった汎用性が高く安価な機器のみで分析が可能で、従来のPCR法の半分以下の初期投資で導入できる。
- 従来のPCR法に比べ分析時間を5分の1に削減できるため、時間当たりの検査点数の大幅な増加、さらには分析にかかる人件費の抑制が期待される。また、従来手法では時間的に困難であった精米・炊飯等加工品の出荷前検査にも対応できるため、製品出荷後のリコールリスクを低減できる。
- 結果判定は、2種類の遺伝子検査液の蛍光発色結果の組み合わせによって行い、一部の例外を除いて、新潟県産コシヒカリ(「コシヒカリ新潟BL」)のみ(図2:パターンI)、新潟県産コシヒカリに他県産コシヒカリもしくは他品種の混入あり(同II)、他県産コシヒカリもしくは他品種のみ(同III)の3通りを定性的に判定できる。
普及のための参考情報
- 普及対象:米の流通加工事業者、分析機関、種苗管理団体
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国
- その他:「新潟県産コシヒカリLAMP判別キット(仮)」を2015年に株式会社ニッポンジーンより発売予定。
具体的データ
その他
- 中課題名:信頼性確保のための原材料・生産履歴判別等の技術開発と標準化
- 中課題整理番号:180d0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2011~2014年度
- 研究担当者:岸根雅宏、奥西智哉
- 発表論文等:
1)岸根、奥西(2011)日食科工誌、58(12):591-596
2)岸根、奥西「新潟県産コシヒカリの判定法およびそれに用いられるプライマーセット」特開2014-230526(2014年12月11日)