国産めん用小麦の加工工程におけるかび毒ニバレノール(NIV)の動態

要約

ゆでめんにおけるニバレノール(NIV)の残存率(上質粉の水分含量で補正した、実質的な残存率)は、0.5である。ゆで調理は最終食品におけるNIV濃度を減少させるのに有効であり、減衰メカニズムは、NIVのゆで汁への溶出である。

  • キーワード:ニバレノール(NIV)、生めん、ゆでめん、ゆで汁、残存率
  • 担当:食品安全信頼・かび毒リスク低減
  • 代表連絡先:電話 029-838-7991
  • 研究所名:食品総合研究所・食品安全研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

食品の安全性を確保するため、穀粒中かび毒の新たな規格基準の策定に備えた科学的根拠の蓄積や評価法のさらなる高度化が求められている。そこで、現在、わが国で汚染が問題になっている小麦中ニバレノール(NIV)の基準値策定に資するため、NIV汚染小麦を用い、製めん・ゆで調理での残存率を解析し、その減衰メカニズムを推定する。

成果の内容・特徴

  • 製めん段階ではNIV補正濃度にほとんど変化が見られないのに対し、ゆで調理段階では、NIV濃度が半減する(図1.品種:チクゴイズミ)。農林61号でも同様の変動が確認されている。
  • 用いた分析法は、添加回収試験における回収率70-120%以内、併行精度10%以内であり、単一試験室における妥当性が確認されている。
  • 製めん・ゆで調理前後での水分変動は著しく、上質粉(13%)から生めん(33%)、さらにゆでめん(73%)に至る過程で水分含量が大きく変動するため、上質粉中の水分含量でNIV濃度を補正し、固形成分中のNIV濃度に換算している。
  • 調理後のNIVの回収率は100%近く(ゆでめん中のNIV + ゆで汁中のNIV = 生めん中のNIV)であり、ゆで調理におけるめん中のNIVの減衰メカニズムは、NIVの分解ではなく、ゆで汁への溶出・移行である(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 小麦中ニバレノール(NIV)の基準値策定の科学的根拠となる。
  • NIVの残存率は、小麦品種、汚染レベルによって異なる可能性が有る。

具体的データ

図1~2

その他

  • 中課題名:かび毒産生病害からの食品安全性確保技術の開発
  • 中課題整理番号:180a0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(食安動衛)
  • 研究期間:2011~2014年度
  • 研究担当者:久城真代、長嶋等、岡留博司
  • 発表論文等:Hossen S.M. et al. (2014) J. Food Process. Preserv. 38(3):1113-1118