LC-MS/MSを用いたトマトのオスモチン様タンパク質Protein NP24の定量法

要約

液体クロマトグラフタンデム質量分析装置(LC-MS/MS)と安定同位体標識内部標準ペプチドを用いることで、トマトのオスモチン様タンパク質Protein NP24を定量できる。

  • キーワード:Protein NP24、オスモチン、トマト、LC-MS/MS、安定同位体標識内部標準ペプチド
  • 担当:食品機能性・代謝調節利用技術
  • 代表連絡先:電話 029-838-7991
  • 研究所名:
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

浸透圧ストレス下、タバコ培養細胞内に誘導されるタンパク質であるオスモチンは、アディポネクチン受容体を活性化することから、メタボリックシンドローム抑制効果を期待されている。液体クロマトグラフタンデム質量分析装置(LC-MS/MS)と安定同位体標識内部標準ペプチドを用いて、タバコと同じナス科に属し、消費量の多いトマトのオスモチン様タンパク質Protein NP24(図1、オスモチンのアミノ酸配列との同一性:91%、外皮に多く存在)の定量法を開発する。Protein NP24に対するELISAなどの正確な定量法は、これまで報告されていない。

成果の内容・特徴

  • 本定量法は、内部標準物質として安定同位体標識ペプチドGQTWVINAPR[13C6,15N4](試薬メーカーへ委託合成)を添加したトマトタンパク質のトリプシン消化物をLC-MS/MSで分析する。Protein NP24のトリプシン消化ペプチドGQTWVINAPR(図1)のピークとGQTWVINAPR[13C6,15N4]のピークとを比較することで、Protein NP24を定量できる。
  • Protein NP24には、NP24 IとNP24 IIのアイソフォームが存在する(図1)。トリプシン消化ペプチドGQTWVINAPRを生成するアミノ酸配列は、これらの変異部位を含まないので、本定量法は、NP24 IとNP24 IIの合計値を与える。
  • Protein NP24の定量の手順およびLC-MS/MSの分析条件を図2に示す。
  • 多重反応モニタリング(MRM)クロマトグラムの保持時間5.6分の位置に、GQTWVINAPRとGQTWVINAPR[13C6,15N4]のピークが観測される(図3)。所要時間15分でfmol/µl濃度レベルでの定量分析が可能である。
  • 例として、トマト外皮のProtein NP24定量値を表1に示す。日内および日間の変動係数は、13%以下である。

成果の活用面・留意点

  • トマトおよびトマト加工品のProtein NP24を定量したい研究者等による本成果の活用を想定している。
  • 定量下限値は、使用するLC-MS/MSの性能に依存する。
  • ペプチドのLC分離モードとして、C18などの逆相クロマトグラフィーが主に用いられているが、GQTWVINAPRを適切にカラム担体に保持しないため、本定量法では、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)を用いている。
  • 複数の試薬メーカーが、安定同位体標識ペプチドの受託合成を行っている。
  • 切断特異性が高い質量分析グレードのトリプシンを使用している。

具体的データ

図1~3、表1

その他

  • 中課題名:代謝調節作用に関する健康機能性解明と有効利用技術の開発
  • 中課題整理番号:310b0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(先端プロ)
  • 研究期間:2012~2014年度
  • 研究担当者:一法師克成、笹沼基恵、大池秀明、小堀真珠子、山本(前田)万里
  • 発表論文等:Ippoushi H. et al. (2015) Food Chem.173:238-242