金属製貫通型マイクロチャネル乳化デバイスを用いた均一サイズ液滴の連続生産

要約

機械加工技術を用いることにより、マイクロチャネル乳化に利用可能な金属製非対称貫通型マイクロチャネルアレイを形成する。金属製の非対称マイクロチャネル乳化デバイスは操作性に優れ、均一サイズの液滴の製造効率が向上する。

  • キーワード:マイクロチャネル乳化、金属製、非対称貫通型マイクロチャネル、均一サイズ液滴
  • 担当:加工流通プロセス・先端流通加工
  • 代表連絡先:電話 029-838-7991
  • 研究所名:食品総合研究所・食品工学研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

乳化食品に含まれる液滴のサイズとサイズ分布は、保存安定性、外観、呈味特性などに影響を及ぼす主要因子である。とりわけ、エマルションに分散している液滴の安定性は、サイズ分布が狭いほど高くなる傾向にある。先端乳化技術であるマイクロチャネル乳化を用いることにより、均一サイズの液滴をマイルドな操作で製造することができる。しかしながら、マイクロチャネル乳化で通常用いられるシリコン製の乳化デバイスは操作性等の面で課題があり、その解決策として非シリコン製マイクロチャネル乳化デバイスの開発が挙げられている。そこで、操作性や液滴生産性の面で有利な金属製の非対称貫通型マイクロチャネル乳化デバイスを開発する。

成果の内容・特徴

  • 非対称貫通型マイクロチャネルアレイは、アルミニウム(Al)基板の上下面方向に機械的な微細加工を施すことにより形成される(図1左)。金属製の非対称貫通型マイクロチャネル乳化デバイス(以下、WMS-Alデバイス)の中心部には、171本の非対称貫通型マイクロチャネルが配置されている。
  • マイクロチャネル乳化操作は、WMS-Alデバイスが組み込まれたモジュールを用いて行う。液滴は、非対称貫通型マイクロチャネルアレイを介して液滴材料である分散相をあらかじめ連続相で満たされている流路に圧入することにより製造される(図1右)。図2に示すように、均一なサイズの大豆油滴が非対称貫通型マイクロチャネル上部のマイクロスロットから連続的に製造される。この時、連続相を乳化デバイスの上面と平行に(横方向に)移動させることに、製造される液滴が回収される。
  • 図1に示されているマイクロスロットの出口サイズは100×700 μmである。WMS-Alデバイスを用いることにより、直径が300 μm程度の均一サイズ液滴が得られる。図3に示すように、製造された液滴のサイズ分布は非常に狭いことが分かる。

成果の活用面・留意点

  • 金属製マイクロチャネル乳化デバイスは、従来のシリコン製マイクロチャネル乳化デバイスにおける課題であった耐衝撃性、耐洗浄性、大型化への対応容易性の面で有利である。
  • ここに開発したマイクロチャネル乳化デバイスは機械加工により形成されるので、乳化デバイスそのもののサイズや非対称貫通型マイクロチャネルの寸法を必要に応じて容易に変更することできる。金属製非対称貫通型マイクロチャネル乳化デバイスを用いて製造可能な均一サイズ液滴の直径は、現時点では最小で100~200 μmである。

具体的データ

図1

その他

  • 中課題名:先端技術を活用した流通・加工技術及び評価技術の開発
  • 中課題整理番号:330c0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2015年度
  • 研究担当者:小林功、植村邦彦、中嶋光敏(筑波大)、張晏如(筑波大)、李然(筑波大)
  • 発表論文等:Kobayashi et at. (2016) 食研報、80: 69-74