プリオン病の診断に有効な抗ペプチド抗体の作製

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要約

MAP法により合成したペプチドを用いて,スクレイピーの診断に有用な抗体を作製した。得られた抗体は,羊,ハムスター,マウス由来のPrPscと反応することから,BSEの診断にも応用可能と考えられた。

  • 担当: 家畜衛生試験場 研究第二部 ウイルス第3研究室
  • 連絡先:0298-38-7841
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:めん羊,山羊,牛
  • 分類:普及

背景・ねらい

羊,山羊のスクレイピー,牛海綿状脳症(BSE)は人のクロイツフェルト・ヤコブ病などとともにプリオン病と呼ばれている。プリオン病の発症に伴い中枢神経系には異常蛋白質(PrPsc)の出現が認められ,本病の診断にはこのPrPscの検出が重要である。PrPscは宿主由来のプリオン蛋白質(PrPc)が変換したものと考えられており,その化学的性質には差が認められるものの両者の抗原性の違いは報告されていない。そこで,正常プリオン蛋白質のアミノ酸配列を基にペプチドを合成し,これを抗原としてプリオン病の診断に有用な抗体の作製を試みた。

成果の内容・特徴

マウスプリオン蛋白質のアミノ酸配列を基にMAP法(Multiple antigenic peptide system)によりペプチドを合成し,ウサギを免疫して抗体を作製した(図1)。

  • ペプチド213-226に対する抗体はウェスタンブロッティング(WB)によりスクレイピー感染マウス,ハムスター,羊の脳から分離精製したPrPscと明瞭な反応が認められた(図2)。
  • ペプチド213-226に対する抗体は免疫組織化学的染色においても,Hydrated autoclave法によりスクレイピー感染羊,ハムスター,マウス脳内のPrPscを検出した(図3)。
  • 合成したペプチドの領域を比較すると,羊,牛の間ではアミノ酸配列に差が認められないことから,作出した抗体はマウス,ハムスター,羊のスクレイピーに加えBSEの診断に利用できるものと思われる。

成果の活用面・留意点

  • MAP法により合成したペプチドは従来法に比べて高い免疫原性を示し,プリオン病の診断に有用な抗体を得た。
  • 本法によるペプチド合成は,他の病原体に対するペプチドワクチンの開発などに応用可能と思われる。 (図4)

具体的データ

図1 合成ペプチドに対する抗体213-226の反応

図2 WBによるハムスター(Ha)、マウス(Mo)、羊(Sh)PrPscとの反応性

図3 免疫組織化学による羊PrPscの検出

図4 各動物種における領域213-226のアミノ酸配列の比較

その他

  • 研究課題名:異常プリオン蛋白の機能解析の研究
  • 予算区分 :総合研究(脳機能)
  • 研究期間 :平成6年度(平成4年度~平成6年度)
  • 発表論文等:1) 代117回日本獣医学会講演要旨,p. 157 (1994).
                      2) Clinical and Diagnostic Laboratory Immunology,2:p.172-176(1995)