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抗体産生能で高低選抜を進めた2系統の近交系日本ウズラは主要組織適合遺伝子複合体(MHC)座もホモ接合体になっていることが明らかとなった。遺伝的に均一でMHC遺伝子がそれぞれ異なるこれらのウズラの系統は,生物学分野で有効に利用できる。
実験動物として遺伝的に均一な近交系動物は大変有用である。身体が小さく,成熟が早いウズラは家禽の実験動物に最も適していると思われる。我々は,ニューカッスル病ウイルスの不活性化ワクチンに対するHI抗体の産生能で高低の2方向選抜育種を47世代にわたって行い,近交係数が60%以上の日本ウズラの2系統を作出している。これらの近交系では,主要組織適合遺伝子(MHC)座もホモになっていることが期待されるため解析を進めた。
近交系ウズラの組織適合遺伝子(MHC)座の構造を,既に分離されているニワトリのMHC遺伝子をプローブに用いてサザン法で解析した。近交化されていないウズラにおいては,ニワトリで知られている3種のMHCプロープで,MHCに特徴的な多型を示すが,上記2系統のウズラ(H系とL系, 図1 )においては,これまで解析した10個体以上の全ての個体においてそれぞれ同一のパターン( 図2 :この場合はクラスII [B-L] MHCがプローブ)を示し,多型が見られなかった。H系とL系の個体を交配させたF1では両方のバンドを全て持つパターン (図3) となっていたことから,HおよびL系ではMHC遺伝子座がホモ接合体であることが確かめられた。
鳥類は近交退化が起こりやすく,ニワトリ以外では,近交系は知られていない。日本ウズラの近交系であるHとL系はそれぞれの特徴が調査され,その特性が安定しているので,免疫学・免疫遺伝学・ウイルス学分野などの研究に有用である。腫瘍ウイルスなどの病原体に対する抵抗性などの違いも明らかにされつつある。