異なる主要組織適合遺伝子(MHC)を持つ2系統の近交系ウズラの作出

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

抗体産生能で高低選抜を進めた2系統の近交系日本ウズラは主要組織適合遺伝子複合体(MHC)座もホモ接合体になっていることが明らかとなった。遺伝的に均一でMHC遺伝子がそれぞれ異なるこれらのウズラの系統は,生物学分野で有効に利用できる。

  • 担当: 家畜衛生試験場 飼料安全研究部 がん原性研究室 慢性毒性研究室 国立環境研究所
  • 連絡先:0298-38-7823
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:実験動物
  • 分類:普及

背景・ねらい

実験動物として遺伝的に均一な近交系動物は大変有用である。身体が小さく,成熟が早いウズラは家禽の実験動物に最も適していると思われる。我々は,ニューカッスル病ウイルスの不活性化ワクチンに対するHI抗体の産生能で高低の2方向選抜育種を47世代にわたって行い,近交係数が60%以上の日本ウズラの2系統を作出している。これらの近交系では,主要組織適合遺伝子(MHC)座もホモになっていることが期待されるため解析を進めた。

成果の内容・特徴

近交系ウズラの組織適合遺伝子(MHC)座の構造を,既に分離されているニワトリのMHC遺伝子をプローブに用いてサザン法で解析した。近交化されていないウズラにおいては,ニワトリで知られている3種のMHCプロープで,MHCに特徴的な多型を示すが,上記2系統のウズラ(H系とL系, 図1 )においては,これまで解析した10個体以上の全ての個体においてそれぞれ同一のパターン( 図2 :この場合はクラスII [B-L] MHCがプローブ)を示し,多型が見られなかった。H系とL系の個体を交配させたF1では両方のバンドを全て持つパターン (図3) となっていたことから,HおよびL系ではMHC遺伝子座がホモ接合体であることが確かめられた。

成果の活用面・留意点

鳥類は近交退化が起こりやすく,ニワトリ以外では,近交系は知られていない。日本ウズラの近交系であるHとL系はそれぞれの特徴が調査され,その特性が安定しているので,免疫学・免疫遺伝学・ウイルス学分野などの研究に有用である。腫瘍ウイルスなどの病原体に対する抵抗性などの違いも明らかにされつつある。

具体的データ

図1 ニワトリ以外の鳥類では唯一の近交系で、MHC遺伝子座もホモ接合体にもつ

図2 H系、L系および各種ウズラ系統のPvu消化染色体DNAのサザンブロット

図3 H系、L系およびF1個個体群のPvII消化染色体DNAのサザンブロット

その他

  • 研究課題名:T細胞認識に関わる遺伝子の発現機構
  • 予算区分 :大型別枠
  • 研究期間 :平成3年度~平成5年度
  • 発表論文等:1) Divergent selection for antibody producibility to inactivated NCV
                     vaccine in Japanese quails, 第3回国際獣医免疫学会講演要旨,
                     p.17-20(1992).
                      2) NDV-抗体産生能によって選抜した日本ウズラ(H系,L系)は,
                     MHC-homo zygous linesである,第87回日本畜産学会講演要旨,
                     p.70(1993).