紫外線照射による鶏卵の鮮度判定法の開発

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要約

新鮮な卵殻に存在するポルフィリンは,紫外線照射により赤色の自家蛍光を発する。この赤色の蛍光強度はポルフィリンの含有量に依存している。したがって,産卵後の卵殻表面にみられる蛍光の色調変化を自家蛍光写真法で観察することにより,保存日数との関係を明らかにし鶏卵の鮮度判定が可能となった。

  • 担当:家畜衛生試験場 企画連絡室 衛生検査料
  • 連絡先:0298-38-7792
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:採卵鶏
  • 分類:普及

背景・ねらい

鶏を代表とする多くの鳥類では,その卵殻にポルフィリンが存在することが知られているが,その役割については不明である。そこで,紫外線照射 法を利用して,鶏の体内での卵殻形成とそれに伴うポルフィリンの分泌,および卵殻中のポルフィリン量の産卵後の変化などを観察した。ポルフィリンに紫外線 を照射すると赤色の蛍光を発することから,紫外線照射による自家蛍光写真法を応用し,鶏卵の鮮度判定法の開発を行った。

 

成果の内容・特徴

  • 紫外線照射した白色卵の自家蛍光の極大波長635nmにおける強度は,保存日数とともに漸減する(図1)。卵殻表面の自家蛍光は,体内の完成卵および放卵直後の卵で最も鮮やかに観察されるが,わずかな自然光や室内灯下で保存を行うと図のような蛍光強度の変化をみることができる。この蛍光強度の変化は,適切な自家蛍光写真法によりカラー写真で鮮明に捉えることができた(写真1)。このことにより,自家蛍光写真法が卵の鮮度判定に有効であることが示唆され,卵殻に含有するポルフィリンの蛍光色と保存日数の関係が明らかとなった。

成果の活用面・留意点

これまで鶏卵の鮮度は卵殻に記入した産卵日が目安となっていた。しかし,今回の紫外線照射法が鮮度判定に有効であることが証明されたことにより,容易に鮮度を判定できるようになった。さらに,新鮮な卵においても軟卵や傷など卵殻に異常のあるものでは,蛍光色および強度に変化が見られるため,今後,この自家蛍光写真法は鮮度以外の卵殻異常についての検査にも有効に応用できる可能性を示唆している。
なお,生体におけるポルフィリンの役割,とくに,卵の新鮮度との関係を解明することが急務と考えている。

具体的データ

図1 鶏卵の保存日数と卵殻表面の蛍光スペクトル

写真1 同一固体の卵の保存日数による蛍光色の変化

 

その他

  • 研究課題名:代謝・機能障害の病態および発病機序の解明
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(平成4年度~平成6年度)
  • 発表論文等:
    1) 自家蛍光写真を用いた鶏卵の鮮度識別について,日医写真会誌,
                                                                           29:18-22(1990).
    2) 卵の鮮度識別法,特許第1936989号 1995.
    3) 紫外線照射による鶏卵の卵殻形成時期および保存後の自家蛍光の推移,鶏病研究会報,
                                                                                                         30:199-208(1994).