馬動脈炎ウイルス構造蛋白の発現とゲノム上の位置

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要約

馬動脈炎ウイルスヌクレオカプシド蛋白および膜蛋白に対するモノクローナル抗体を作製した。これらの抗体を用いて,バキュロウイルスの系によって発現させた遺伝子産物の同定を行い,ウイルス構造蛋白のゲノム上の位置を決定した。

  • 担当: 家畜衛生試験場 研究第二部 ウイルス第1研究室
  • 連絡先:0298-38-7761
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:馬
  • 分類:研究

背景・ねらい

馬ウイルス性動脈炎は発熱,鼻汁漏出,全身性の浮腫,妊娠馬における流産などを主徴とする。本病は従来接触伝播による感染様式をとると考えられてきたが,近年,感染耐過した種牡馬の精液に排泄されるウイルスによる生殖器感染によっても伝播することが知られるようになった。本病は世界的に分布していると考えられているが,わが国においてはこれまで本病の発生報告はなく,清浄国と考えられている。しかし,諸外国からの馬の輸入の増加にともない,本ウイルスの侵入の危険も高まってきていることから,本病の新しい早期診断法の開発に向けて,EAV遺伝子の構造及び機能について解析した。

成果の内容・特徴

  • BHK-21/13NIAH浮遊細胞を用い,ウイルス精製法としてホロファイバー濃度,30%グリセリン-50%酒石酸カリウム密度勾配遠心後,10%-60%蔗糖密度勾配遠心によって精製した場合,最も良好な結果が得られた。この精製ウイルスを用いて,常法に従ってモノクローナル抗体を作出した。得られたハイブリドーマは膜(M)蛋白と考えられる19kDaの蛋白を認識するものが6クローン,ヌクレオカプシド(N)蛋白と考えられる14kDaの蛋白を認識するものが1クローン,不明が2クローンであった。このうち,抗M抗体2種,不明1種が中和能を有していた。
  • 免疫沈降法によってウイルスの主要構成蛋白を同定したところ,馬感染血法は8種の蛋白(分子量210,86,72,48,44,32,19,14kDa)を沈降させたが,マウス免疫血清はこのうちMとNの2種の蛋白のみを沈降させた。
  • オープン・リーディングフレーム(ORF)6と7の領域をバキュロウイルスに組み込んだ。7および6の領域を組み込んだ両組換えウイルス(BacEA14およびBacEa19)とも予想された分子量の蛋白を発現していた(図1)。発現蛋白の特異性を,モノクローナル抗体および免疫血清を用いた免疫沈降法と蛍光抗体法によって検討した。BacEA14は馬,マウスの免疫血清および抗Nモノクローナル抗体と強く反応した(図2)。BacEA19は馬,マウスおよび抗Mモノクローナル抗体と弱く反応した。この結果,ORF7がN蛋白を,ORF6がM蛋白をコードしていることが明らかとなった。

成果の活用面・留意点

ヌクレオカプシド蛋白および膜蛋白に対するモノクローナル抗体の作製とバキュロウイルスによる蛋白発現により,早期診断法の開発や診断用抗原の供給に利用できる。

具体的データ

図1 EAV ORF 6および7遺伝子組換えバキュロウイルス感染SF21AE細胞のSDS-PAGE像

図2 組換えバキュロウイルス感染SF21AE細胞の蛍光抗体法

その他

  • 研究課題名:馬動脈炎ウイルス(EAV)遺伝子の構造及び機能診断
  • 予算区分 :経常(交流共同研究)
  • 研究期間 :平成5年度(平成3年度~平成5年度)
  • 発表論文等:1) 第115回日本獣医学会 講演要旨集p.171(1993).
                      2) 第116回日本獣医学会 講演要旨集p.136(1993).
                      3) 第7回国際馬伝染病会議 講演要旨集p.28,p.127(1994).