豚コロナウイルス性下痢の迅速診断法の開発

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要約

RT- PCR による豚コロナウイルス(豚流行性下痢ウイルスおよび豚伝染性胃腸炎ウイルス)遺伝子の検出が可能となった。さらにモノクローナル抗体を用いたウイルス特異的抗原の検出が可能となった。

  • 担当:家畜衛生試験場 九州支場 臨床ウイルス研究室
  • 連絡先:099-268-2078
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:豚
  • 対象:普及

背景・ねらい

豚に下痢を起こすウイルスとして豚流行性下痢(PED )ウイルスおよび豚伝染性胃腸炎(TGE)ウイルスが知られている。これらのコロナウイルスによる下痢は症状が酷似するうえ,そのウイルスの類症鑑別は困難であった。また,これらウイルス感染には不顕性感染が多く,ウイルスの伝播様式を解明するうえでもウイルス検出技術の開発が急務である。そこで豚のコロナウイルス性下痢の迅速診断法を確立するため,RT-PCR 法によるウイルス遺伝子の検出とモノクローナル抗体を用いたウイルス特異的抗原の検出を試みた。

成果の内容・特徴

  • PEDウイルスに対するモノクローナル抗体を作出し,間接蛍光抗体法(IFA)による抗原の検出を試みたところ,PEDウイルス国内分離株およびCV777株(標準株)ともにウイルス感染細胞の細胞質に特異蛍光が観察され,従来の高度免疫血清にみられた非特異的反応は認められなかった(図1)。
  • 既知のPEDウイルスおよびTGEウイルス遺伝子の塩基配列よりプライマーをそれぞれ設計した。常法に従ってウイルス培養上清よりRNA を抽出し,RT-PCR を実施したところ,PED ウイルス検出用プライマーではPEDウイルス国内分離株,トリプシン非依存性増殖株およびCV777(標準株)で,TGEウイルス検出用プライマーではTGEウイルスTO-163 株で特異的なバンドが検出された。
  • 野外発生材料を用いてRT-PCR によるウイルス遺伝子検出を試みた。下痢便あるいは腸管乳剤をリン酸緩衝液で20 %乳剤に調製し,常法に従ってRNA の抽出を行い,RT- PCR を実施したところ,下痢便および腸管乳剤ではTGEウイルス遺伝子が検出されたがPEDウイルス遺伝子は検出されず,TGE の迅速診断が可能であった(図2)。さらにウイルス分離を行ってそのPCR 産物の塩基配列を調べたところPCR で増幅された 領域の塩基配列は比較的よく保存されていた。

成果の活用面・留意点

豚コロナウイルス性下痢の迅速鑑別診断が可能となった。また,本法は緊急対応を必要とする豚の下痢の補助診断として有用である。

具体的データ

図1 間接蛍光抗体法によるPEDウイルス抗原の検出

図2 野外材料からの豚コロナウイルス遺伝子の検出

その他

  • 研究課題名:温暖地施設型養豚における下痢ウイルスの検出技術の確立
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成11年度(平成9 年~平成11 年)