馬由来Salmonella Abortusequiは95 kbの血清型特異的病原性プラスミドを保有する

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要約

馬パラチフスの発生に関連して分離されたSalmonella Abortusequi(SA)の多くは血清型特異的な病原性プラスミドを保有することを明らかにした。本プラスミドの証明はSA同定に役立つ。

  • 担当:家畜衛生試験場 飼料安全性研究部 ズーノーシス研究室
  • 連絡先:0298-38-7815
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:馬
  • 対象:普及

背景・ねらい

馬パラチフスは馬に特異性の強いSalmonella Abortusequi(SA)を原因菌とし,成馬のパラチフス症,妊娠馬の流産,種雄馬の精巣炎等を主徴とする。世界的には本症の発生は減少傾向にある が,わが国では一部地域の重種馬で今なお継続的発生が認められる。さらに他地域へも飛び火 して流産の集団発生をもたらすこともある。われわれは本症の発生に関連して分離された馬由来SAの疫学マーカーによる解析を進める中で,本菌の多くがサイズの共通な巨大プラスミドを保有することを見いだした。そこで本プラスミドの病原性への関与と診断への応用を検討した。

成果の内容・特徴

  • 1987年から1996年に国内の馬から分離されたSA18株のうち17株はサイズの共通な巨大プラスミドを有していた。17株のプラスミドの制限酵素HindIIIおよびSalI消化後の電気泳動パターンは全て同一であり,共通のプラスミドであることが示唆された。産生されたバンドのサイズから本プラスミドのサイズは95 kbと算出された。
  • サルモネラの他の血清型で報告されている血清型特異的プラスミド上には宿主体内での持続感染に関与すると考えられるSalmonella plasmid virulence (spv)遺伝子の存在が知られている。そこでSAの95 kbプラスミドにspv遺伝子が存在するか否かを明らかにする目的でRexah et al.(1994)のPCRおよびサザンブロット解析を行ったところ,目的のDNA増幅を認めた。
  • プラスミド脱落株のマウスに対するLD50は親株より48倍大きく,明らかな病原性の低下が認められた。形質転換法による本プラスミドの再導入により病原性は復帰したことから,機能的にも本プラスミドが病原性に関与することが明らかとなった(図1,表1)。
  • いくつかの制限酵素を用いた制限酵素断片長多型(RFLP)解析の結果から,SAの95 kbプラスミドはSAと同じO4群に属するSalmonella Typhimurium(ST)の有する90 kbの血清型特異的プラスミドと近縁であることが明らかとなったが,両プラスミドはEcoRIおよびHindIII消化後の泳動パターンで容易に識別可能であった(図2)。

成果の活用面・留意点

95 kbプラスミドの存在の証明はSA同定に利用できる。また馬から分離されたO4群サルモネラでH抗原型別不能時にプラスミドプロファイリングならびに分離プラスミドのRFLP解析を行なうことで,その分離株がどの血清型の変異株であるかを推定することができる。

具体的データ

図1 供試SA菌株のプラスミドプロファイル

表1 SAのマウスに対する病原性

図2 95kbプラスミドのRFLP解析結果

その他

  • 研究課題名:家畜由来サルモネラの分子疫学的解析
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9~11年度
  • 発表論文等:
  • Salmonella Abortusequi strains of equine origin harbor a 95 kb plasmid responsible for virulence in mice. Vet. Microbiol., 68: 265-272 (1999)