アフリカ豚コレラウイルスp32及びp54の発現と診断への応用
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要約
アフリカ豚コレラウイルス(ASFV)の主要抗原タンパク質p32,p54を組換えバキュロウイルスを用いて発現させた。発現タンパク質とASFV感染豚野外血清及びASFV接種豚経過血清との反応性を調べた結果,診断用抗原としての有用性が確認された。
- 担当:家畜衛生試験場 海外病研究部 診断研究室
- 連絡先:042(321)1441
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:豚
- 対象:指導
背景・ねらい
アフリカ豚コレラ(African swine fever;ASF)は,国際獣疫事務局(OIE)がリストAに指定している国際重要伝染病である。本病には有効なワクチンがなく,感染豚の淘汰以外に防除法がないため,我が国のような清浄国に侵入した場合,甚大な経済的被害をもたらすことが予想される。また,近年,本病の病勢は急性から慢性あるいは不顕性へと移行する傾向にあり,防疫が一段と困難になってきている。国際的な物流の活発化に伴うASFの侵入リスクが高まっている現在,その摘発技術の高度化をはかることは必須である。本研究では,遺伝子組換えタンパク質を応用することによって,ASFの診断精度を向上させるとともに,感染性病原体を用いない安全な血清診断法を開発することを目的とする。
成果の内容・特徴
- ASFウイルスLisbon'60株のCP204L及びE183L遺伝子(それぞれp32,p54をコードしている )をPCRによって増幅後,バ キュロウイルス発現ベクターに組み込み,組換えバキュロウイルスを作出した。p32及びp54発現バキュロウイルスを接種した昆虫培養細胞(Sf21)の電気泳動像を調べたところ,組換えタンパク質はそれぞれ単一のバンドとして確認された。ま た組換えp32は,培養細胞内に蓄積するだけでなく,培養上清中にも分泌されることが判明した。
- ASFの国際レファレンスセンターであるスペイン国家畜衛生研究センターに保管されている野外豚血清及びASF発生国で分離された各ウイルス株の抗血清(米国プラムアイランド家畜疾病センターより入手)との反応性をイムノブ ロット法によって調べたところ,組換えp32,p54ともに特異的反応を示した。また,対照としておいた陰性血清との間には反応は認められず,これらの組換えタンパク質が血清診断用抗原として有用であることが確認された。
- 組換えp32及びp54とASFウイルス接種豚から経時的に採取した血清との反応性を調べた( 図1 )。その結果,感染豚体内においてp32よりもp54に対する抗体産生が早いことが確認され,感染初期の抗体検出にはp54の方が優れていることが示された。
成果の活用面・留意点
これらの組換えタンパク質単独でも十分診断用抗原として有用であることが判明したが, 同じ陽性血清でも反応性に差が認められることが多く,より精度の高い診断を行うためには,2つのタンパク質を併用する方がよいと思われる。現在,多検体処理に優れたELISA法も開発中である。
具体的データ

その他
- 研究課題名:アフリカ豚コレラウイルス病原性遺伝子の発現蛋白を利用した診断法の開発
- 予算区分:先端技術開発研究(病原遺伝子)
- 研究期間:平成7~12年度
- 発表論文等:
1.第123回日本獣医学会講演要旨集,p.152 (1997)
2.第124回日本獣医学会講演要旨集,p.229 (1997)
3.長崎大学熱帯医学研究所共同研究集会会報,p.26-37 (1997)
4.第42回大韓獣医学会抄録,p.63-64