免疫病理学的手法による豚コレラウイルス抗原の検出

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要約

豚コレラウイルス実験感染及び野外感染豚のホルマリン固定・パラフィン包埋標本を用いて,免疫組織化学的手法による豚コレラウイルス抗原の検出を試みた。豚コレラウイルス抗原は,免疫組織化学的手法により扁桃の陰窩上皮細胞,リンパ組織の細網細胞,腎臓の尿細管上皮細胞,肺の気管支上皮細胞や膵臓の腺房細胞等に検出された。急性・慢性型豚コレラのパラフィンブロックを用いた診断が可能であることが確認された。

  • 担当:家畜衛生試験場 病態研究部 上席研究官
  • 連絡先:0298(38)7776
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:豚
  • 対象:指導

背景・ねらい

平成12年10月に予定している豚コレラの全国的なワクチン接種中止後の対策として,野外からの材料について簡易な免疫病理学的診断法の開発が望まれている。そのため,病理組織学的検索目的で採材されたホルマリン固定・パラフィン包埋標本を用いて,免疫組織化学による豚コレラウイルス(HCV)抗原の検出法を検討し,豚コレラの免疫病理組織学的診断法を確立する。

成果の内容・特徴

  • HCVに対する市販モノクロナル抗体(WH303;Central Veterinary Laboratory, Weybridge, UK)を用いて,急性型豚コレラウイルス(ALD株)と慢性型豚コレラウイルス(神奈川株)実験感染豚及び野外感染豚の組織におけるウイルス抗原の検出を試みた。フォルマリン固定標本から抗原を露出させるため,Antigen Unmasking Solution (Vector) を高温処理法で1分間作用させた。
  • 急性型豚コレラの特徴病変は,リンパ組織の変性・壊死と血管変性であった。HCV抗原は,扁桃,脾臓,膵臓や肺などの組織病変に一致して検出された。
  • 慢性型豚コレラの特徴病変は,リンパ組織の変性と細網細胞の活性化であった。HCV抗原は,扁桃,リンパ組織,腎臓,膵臓,肺や副腎などで検出されたが,組織病変に一致しなかった。
  • 1980年,ウイルス学的及び病理組織学的に豚コレラと診断された計4例の野外感染例について免疫組織化学的染色を実施した。特徴病変はリンパ組織の変性・壊死と血管変性であった。HCV抗原は,扁桃の陰窩上皮細胞( 図1),脾臓の細網細胞,腎臓の尿細管上皮細胞( 図2 ),肺の気管支上皮細胞や気管支腺細胞( 図3 ),回腸のパイエル板に分布する細網細胞( 図4 )や膵臓の腺房細胞などで検出され,実験感染豚の成績とほぼ一致していた( 表1 )。

成果の活用面・留意点

家畜保健衛生所の病性鑑定施設において,市販の抗HCVモノクロナル抗体(WH303)を用いることにより,HCV抗原をホルマリン固定・パラフィン標本で証明する事が可能となり,豚コレラの診断及び疫学的解析等に活用できる。

具体的データ

図1 扁桃の陰窩上皮細胞に認められた豚コレラウイルス抗原

図2 腎臓の尿細管上皮細胞に認められた豚コレラウイルス抗原

図3 気管支の上皮細胞と気管支線細胞に認められた豚コレラウイルス抗原

図4 回腸のパイエル板の細網細胞に認められた豚コレラウイルス抗原

表1 豚コレラウイルス感染豚におけるウイルス抗原の分布

その他

  • 研究課題名:免疫病理学的手法による豚コレラ診断の検討
  • 予算区分:経常研究
  • 研究期間:平成10年~平成11年
  • 発表論文等:
    1.Immunohistochemical detection of hog cholera virus antigen in paraffin wax-embedded tissues from naturally infected pigs. J. Comp. Pathol., 121: 283-286 (1999)