鶏腎炎ウイルスの遺伝子解析

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要約

従来ピコルナウイルス科に分類されていた鶏腎炎ウイルス(ANV)の全塩基配列を決定し,ウイルスゲノム解析の結果,ANVはアストロウイルス科に属するウイルスであることを明らかにした。

  • 担当:家畜衛生試験場 ウイルス病研究部
  • 連絡先:0298(38)7760
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:鶏
  • 対象:研究

背景・ねらい

大規模養鶏場においては,数種類の腸管感染性ウイルスの常在化が知られているが,それらのウイルス学的性状や鶏群への影響については十分明らかにされていない。そこで,鶏の腸管感染性ウイルスの一つである鶏腎炎ウイルス (Avian Nephritis Virus = ANV)遺伝子の全塩基配列の決定と構造解析を行い,ANVの分類学的位置を明らかにする。さらに得られた情報をもとにPCR法等の遺伝子診断法の確立を目指す。

成果の内容・特徴

  • ANV感染細胞培養液からポリエチレングリコールを用いてウイルスを濃縮後,ショ糖密度勾配超遠心を行い分画採取し,電子顕微鏡によりウイルス粒子を確認した。ウイルス粒子が多数認められた分画をcDNA作製材料として用いた。
  • ANV(G-4260株)の全塩基配列,6927ベースを決定し,DDBJ/EMBL/GenBank データベースに登録した。〔Accesion No.AB033998〕。
  • ウイルスのゲノムRNAは,3つの Open Reading Frame (ORF)がオーバーラップして存在しており(図1),ANV感染細胞中にはSubgenomic RNAが存在していた(図2)。この遺伝子構造は1994年に新しく認定されたアストロウイルス科のそれと同様であった(表1)。ANVは,従来はピコルナウイルスと考えられていたが,本研究によりアストロウイルス科のウイルスであることが初めて明らかとなった。

成果の活用面・留意点

ヒトのアストロウイルスに関しては,現在8つの血清型の存在が知られている。ANVについても2つ以上存在することが判明しており,RNAウイルス特有の遺伝的多様性を考えつつ,RT-PCR法による迅速診断法の開発を進める必要がある。

具体的データ

図1 鶏腎炎ウイルスの遺伝子構造

図2 ノーザンブロットハイブリダイゼーション

表1 ANVのORFと他のアストロウイルスのORF間のアミノ酸シークエンスのホモロジー

その他

  • 研究課題名:鶏腎炎ウイルスの遺伝子解析と迅速診断法の確立
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成11年度~13年度
  • 発表論文等:
    1.J.Virol., 74(2000) In press