豚エンテロウイルスの遺伝学的再分類および迅速検出法の開発

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要約

豚エンテロウイルスは,遺伝学的に3グループに再分類され,うち1グループについては,ピコルナウイルス科の新たなウイルス属として独立させる必要が示唆された。また,同グループの株を迅速に検出できるRT-PCR法を開発した。

  • 担当:家畜衛生試験場 ウイルス病研究部 病原ウイルス研究室
  • 連絡先:0298-38-7763
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:豚
  • 対象:研究

背景・ねらい

豚エンテロウイルス(PEV)は,下痢,繁殖障害,脳脊髄炎を呈する豚のみでなく,無症状豚からもしばしば分離される。これまで,中和試験により少なくとも13の血清型に分けられているが,血清型と病型の関係は明らかではない。PEV性脳脊髄炎の原因ウイルスとして知られているTeschen株,Talfan株はPEV-1に分類されているが,脳脊髄炎を呈さない豚からも多くのPEV-1(SF12株 など)が分離されており,血清型別に代わる遺伝子型別法が求められてきた。また,病性鑑定においては,その分離・同定に多大な労力や時間が必要とされてきた。本研究では,PEVの遺伝学的解析を行うとともに,それに基づく迅速な検出・同定法の開発を試みた。

成果の内容・特徴

  • PEV-1 Talfan株のほぼ全塩基配列を明らかにし,他のピコルナウイルスとの比較を行ったところ,相同性の低さおよびゲノム構造の違いから,ピコルナウイルス科の新たなウイルス属として再分類される必要があることが示唆された。
  • RT-PCR法により得たPEV全血清型代表株の部分的な遺伝子断片の塩基配列を比較した結果,PEVは3つの遺伝学的グループに分類された。( 図1 , 2 )
  • 上記3グループのうち,Talfan株を含むグループについて特異的に検出できるRT- PCR法を開発した。

成果の活用面・留意点

  • Talfan株を含むグループについては,1999年国際ウイルス分類委員会(ICTV)において,ピコルナウイルス科テシオウイルス属として再分類されることが承認された。
  • 本研究で開発したRT-PCR法の有効性を確認するために,今後数多くの野外株に応用 し,その結果を蓄積していく必要がある。

具体的データ

図1 3Dポリメラーゼ領域の系統解析

図2 キャプシドVP2領域の系統解析

その他

  • 研究課題名:
    1.複合感染豚におけるウイルス迅速検出法の確立
    2.豚エンテロウイルスの抗原性関連領域の解析
  • 予算区分:
    1.経常
    2.バイテク(病原遺伝子)
  • 研究期間:
    1.経常;平成11年度(平成9~11年度)
    2.バイテク;平成11年度(平成11~12年度)
  • 発表論文等:
    1.Sequence determination and phylogenetic analysis of RNA-dependent RNA polymerase (RdRp) of porcine enterovirus 1 (PEV-1) Talfan strain. Arch. Virol., 144 : 1845-1852 (1999)