豚由来 Pasteurella multocida のSDS-PAGEによる菌体蛋白型別

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要約

豚由来 Pasteurella multocida をSDS-PAGEにより7つの菌体蛋白型に区別して,菌体蛋白型と菌株の由来,血清型及び毒素産生性との関係を調べた。豚の肺炎及び胸膜炎から主として分離される毒素非産生性P. multocidaは菌体蛋白型で区別できることが示された。

  • 担当:家畜衛生試験場 細菌・寄生虫病研究部 上席研究官
  • 連絡先:0298(38)7754
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:豚
  • 対象:研究

背景・ねらい

Pasteurella multocida による豚のパスツレラ病は多頭飼育下の肥育豚群に多発し大きな被害を与えている。豚由来P. multocidaは毒素産生性株と毒素非産生性株とに区別される。毒素産生性P. multocidaは豚萎縮性鼻炎の病原体の一つとして認められている。一方,毒素非産生性P. multocidaは,豚では主としてパスツレラ肺炎から分離され,その多くは血清型A:3である。しかし毒素非産生性P. multocidaの病原学的意義は必ずしも明確にされていない。また本菌の菌体蛋白と菌株の由来や血清型との関係についても不明な点が少なくない。そこで今回,SDSーPAGEにより豚由来P. multocidaの菌体蛋白の型別を試みると ともに,菌体蛋白型と菌株の由来,血清型,毒素産生性との関係について調べた。

成果の内容・特徴

  • わが国で1985年~1996年に豚から分離されたP. multocida 計56株(肺炎由来38株 ,胸膜炎由来5株,関節炎由来1株,鼻腔由来12株)及び参照株2株(P.multocida ATCC43137株, ATCC43019株)を供試した。SDS-PAGEによる菌体蛋白の泳動像には31~45kDa間の主ポリペプチドの形成位置に菌株間で相違がみられた( 図1 )。吸光度グラフによるSDS-PAGE像の比較では3つの主峰を特徴とする波形が認められた( 図2 )。第1峰(ca47kDa)と第3峰(ca28.5kDa)の形成位置は共通的であったが,第2峰の形成位置には菌株間で相違がみられた(ca34.5~39.5kDa)。この第2峰の形成位置の相違により供試菌株は 1~7の7型に型別された( 表1 )。
  • 供試菌株の由来と菌体蛋白型との関係については,肺炎由来株が主として2型と3型,胸膜炎と関節炎由来株は5型と6型,鼻腔由来株は主として4型と7型に型別された。血清型及び毒素産生性との関係については,A型菌株が主として2型と3 型,D型菌株は4型と7型,毒素産生性13株(肺炎由来4株, 鼻腔由来9株)は4型と7型に型別された。ATCC43137株とATCC43019株は2型と7型に型別された 。

成果の活用面・留意点

豚の肺炎及び胸膜炎から主として分離される毒素非産生性 P. multocida は菌体蛋白型で区別できることが示されたことから,菌体蛋白型と病原性との関係について豚での感染試験で調べ,本菌の病原学的意義を明らかにする。

具体的データ

図1 SDS-PAGEによる豚由来P.multocidaの菌体蛋白の比較

図2 吸光度グラフによるSDS-PAGE像の比較

表1 豚由来P.multocidaの菌体蛋白型と血清型及び毒素産生性との関係

その他

  • 研究課題名:豚由来毒素非産生性 Pasteurella multocida の病原学的意義の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成11年度(平成10年~平成12年)
  • 発表論文等: 第128回日本獣医学会講演要旨集, p.249 (1999)