豚丹毒菌の粘膜投与型組換えサブユニットワクチンの開発

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要約

豚丹毒菌の組換え蛋白抗原についてブレビバチルス菌を用いた生産技術を初めて確立し,このサブユニット抗原と無毒変異大腸菌毒素との混液の経鼻投与により豚に強固な感染防御免疫を与え得る方法を開発した。

  • 担当:家畜衛生試験場 製剤研究部 上席研究官
  • 担当:製剤研究部 検定研究官
  • 担当:製剤研究部 製剤工学室長
  • 担当:ヒゲタ醤油株式会社開発研究部
  • 担当:藤田保健衛生大学 医学部 微生物教室
  • 連絡先:0298-38-7737
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:豚
  • 対象:研究

背景・ねらい

畜産物安全性確保と生産コスト低減は,わが国の畜産の必須の命題であるが,その解決策として家畜衛生分野では,安全性と有効性に優れ,低コスト生産が可能な粘膜投与型サブユニットワクチンの開発が強く要請されている。そこで大腸菌系とは異なり,内毒素を含まず,至適条件下では組換え蛋白を大量に細胞外に放出するという利点をもつBacillus brevis (以下ブレビバチルス菌と略)を利用し(図1),豚丹毒菌の次世代サブユニットワクチン用組換え蛋白抗原の生産技術を開発する。また家畜では未開拓である粘膜投与型サブユニットワクチンを開発するために,経鼻投与した豚丹毒菌組換え蛋白抗原に対する大腸菌易熱性腸管毒素の無毒変異組換え体(mLT)の粘膜免疫増強(アジュバント)活性について検討を加える。

成果の内容・特徴

  • 豚丹毒菌の46.5kDa組換え蛋白(46.5kPA)をブレビバチルス遺伝子発現系を用いて,安定的に生産できる技術を初めて確立した。46.5kPAは従来の大腸菌発現系で生産されたものに比べ,製法が容易( 図2 ),毒性が著しく低い,安定性が高い,効力が強いという多くの利点をもつことを示した。
  • 46.5kPAは,わずか10μg/1頭という微量の筋肉注射により豚に強力な防御免疫力を賦与できたので,最初の豚丹毒予防用のサブユニットワクチンとなる可能性を示した( 表1 )。
  • 大腸菌の無毒組換え変異腸管毒素(mLT)が豚に対し強力な粘膜アジュバント活性をもつこと,mLT+46.5kPAは豚への経鼻免疫で強毒豚丹毒菌感染に対する完璧な防御免疫を与えることを初めて見い出し,経鼻投与型サブユニットワ クチン用の実用アジュバントとしての高い利活用性を示した。 ( 表2 )
  • mLT+46.5kPAを経鼻投与した豚の鼻汁中に高レベルのIgA(粘液)抗体が産生されることを証明し,組換え蛋白抗原による豚の実用的粘膜局所免疫増強方法を初めて示した。

成果の活用面・留意点

    本研究成果は,以下のように家畜用ワクチンの製法と利用方法に飛躍的な技術革新をもたらす。
  • ブレビバチルス生産系での家畜病原体のサブユニットワクチン候補抗原の生産は世界で最初の成功例であり,この新技術は今後,色々な病原体のサブユニットワクチンの開発に利用可能である。
  • ブレビバチルス菌による46.5kPAの生産法と用法は本研究担当者が特許出願・審査請求中であり,権利化(家衛試持ち分は40%)にともない国有財産として利活用できる。
  • 今回初めて証明したmLTの豚に対するアジュバント活性新知見は,豚丹毒菌ばかりでなく,色々な病原体の粘膜投与型ワクチンに広く活用できる。 今後の留意点として,サブユニットワクチンの実用開発のための民間との連携実用開発研究強化が必要である。新たにワクチン開発標的とする病原体については遺伝子特許を十分に調査した上でブレビバチルス系の活用研究を推進する必要がある。また組換え体の動物医薬品としての製造・用法規制への対応が重要であ る。

具体的データ

図1 ブレビバチルス菌は46.5kPAを菌体外に大量生産する

図2 46.5kPA防除抗原の生成

表1 46.5kPAは10μg以上の筋肉注射で免疫効果発揮

表2 mLTの40μg以上を46.5kPAに加えれば経鼻免疫でも免疫効果発揮

その他

  • 研究課題名:Bacillus brevisによる家畜病原微生物の抗原及び免疫増強性生理活性物質の組換え蛋白の効率的生産技術の確立
  • 予算区分:経常(交流共同)
  • 研究期間:平成10~12年度
  • 発表論文等:
    1.特許出願審査請求件名:豚丹毒菌サブユニットワクチン(特願平11-94004号)