ネオスポラ実験感染マウスの経時的病理変化と血清中サイトカイン産生

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要約

ネオスポラ感染に対してNudeは感受性,Wildは抵抗性を示すことがわかった。またNudeの血管内皮細胞内でタキゾイトが増殖することが明らかとなり,ネオスポラが血液を介する移動経路をとることが示唆された。ネオスポラ感染に対する生体防御機構には,IFNγなどのTh1細胞性免疫の関与が示唆された。

  • 担当:家畜衛生試験場 北海道支場 臨床病理研究室
  • 連絡先:011(851)5226
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:乳用牛・肉用牛
  • 対象:研究

背景・ねらい

ネオスポラはシストを形成するコクシジウム原虫であり,イヌとウシに運動麻痺または異常産を引き起こす。近年,in vitroでIFNγがネオスポラの増殖を抑制することが報告されている。またin vitroでの病態解析が報告されているが,in vivoでの生体防御機構に関する報告は乏しい。そこで本研究では、ネオスポラ感染時の生体防御機構の解析を目的とし,BALB/c nu/nu(Nude)とBALB/c(Wild)マウスを用いてネオスポラ接種後の臨床症状ならびに病理学的変化および血清中サイトカインの産生濃度を経時的に比較した。

成果の内容・特徴

  • 感染にはネオスポラJPA1株を用い,2×105個のタキゾイトを体重約18-22gのNudeとWildに腹腔内接種した。マウスは接種後0,1,4,7,14,21,28,90および180日に心採血後,剖検に供した(n=3)。常法によりHE染色,ならびに抗N.canium血清を用いたABC染色を実施した。また血清中のIFNγ,IL-6およびIL-4濃度をELISA法により測定した。
  • Nudeは,接種後18-20日で神経症状を呈し,その後2-5日以内にすべて死亡した。Wildは接種後180日まで無症状であった。
  • 病理組織学的にNudeで接種後4日目より子宮,膵臓にタキゾイトがみられ,その後全身臓器でタキゾイトの増殖が認められた。また血管内皮細胞内にタキゾイトが認められた(図1)。Wildでは接種後4日目の子宮でのみタキゾイトが認められた。
  • IFNγはNudeで接種後1,4および7日目に検出され,その後病態の進行に伴って接種後14,21日目に増加した(図2)。WildではIFNγは接種後1,7日目に検出された。IL-6はNudeでのみ接種後14,21日目に検出され,Wildではすべて検出限界以下であった。IL-4はNude,Wildともすべて検出限界以下であった。

成果の活用面・留意点

ネオスポラ感染に対してマウスの系統より感受性に差があることを示した。またネオスポラ感染に対する生体防御機構には,IFNγなどのTh1細胞性免疫か関与することを明らかにした。さらにネオスポラの生体内移動経路および経時的分布を明らかにした。この成績はネオスポラ感染症の診断および予防策確立の際に有益な資料となる。

具体的データ

図1 血管内皮細胞内のネオスポラタキゾイト

図2 血清中サイトカインの産生濃度の経時的変化

その他

  • 研究課題名:サイトカインによる牛の原虫感染症の治療技術の開発
  • 予算区分:畜産対応研究(サイトカイン)
  • 研究期間:平成11年度 (平成9年~11年)
  • 発表論文等:
    1.第127回日本獣医学会講演要旨集, p.70 (1999)
    2.Vet. Pathol., 36 : 321-327 (1999)