モバイル超音波画像診断装置による豚の妊娠診断と繁殖障害の診断

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要約

市販のモバイル超音波画像診断装置を用いることにより、交配後19日以降の母豚での妊娠診断を精度良く実施することができる。また、繁殖障害豚についても、卵巣静止や卵巣嚢腫などの診断に用いることが可能である。

  • キーワード:ブタ、モバイル、超音波画像診断装置、妊娠診断、繁殖障害、卵巣診断
  • 担当:動物衛生研・生産病研究部・臨床繁殖研究室
  • 連絡先:電話029-838-7784、電子メールでの問い合わせはこちらから。
  • 区分:動物衛生
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

繁殖母豚の交配後の妊娠診断や無発情などの繁殖障害の診断は、生産性を上げるうえで重要である。これまで、ブラウン管モニ タを搭載し交流電源を使用する超音波画像診断装置を用いた妊娠診断についての報告はあるものの、電源の配置や装置の可搬性などから、生産現場ではほとんど 利用されていない。また、無発情豚については、直腸検査による卵巣診断が有効であるが、未経産や初産~2産の経産豚では直腸検査が困難であることが多く、 的確な診断が行われていない。そこで、蓄電池で稼働し、軽量で持ち運びも容易なモバイル超音波画像診断装置を用いて、妊娠診断を行うとともに、直腸検査が 困難な豚にも応用できる体表からの卵巣診断法について検討する。

成果の内容・特徴

  • ブラウン管モニタを搭載した超音波診断装置による卵巣の超音波画像は、血液中の性ホルモン濃度の推移に一致する。液晶モニタはブラウン管モニタに比べ画像の解像度が劣るが、妊娠診断および卵巣診断に支障なく使用できる。
  • 液晶モニタを搭載した蓄電池で稼働するモバイル超音波画像診断装置を用いて、交配後16日以降の母豚について、下腹部からの妊娠診断を民間農場において行った。交配後19日以降では85%以上の診断が可能で、妊娠診断の精度は97.9%と高く、実用性が示された(表1)。この期間における同農場の受胎率は95.2%であった。子宮角内に胎水の貯留(図1-a)あるいは胎子(図1-b)が認められる場合を妊娠陽性と診断し、胎水が認められない場合はその2週間後に再度検査を実施し、2回目の検査でも胎水が認められない場合に妊娠陰性と診断する。
  • 民間農場の繁殖障害豚について、モバイル超音波画像診断装置を用いた下腹部からの超音波検査及び直腸検査を実施し、繁殖障害の発生率は11.7%であった。モバイル超音波画像診断装置は、卵巣静止(図2-a)、卵巣嚢腫(図2-b)、鈍性発情(図2-c)などの診断に利用できる。

成果の活用面・留意点

  • モバイル超音波画像診断装置により、妊娠診断を精度良く実施することができる。
  • 繁殖障害豚などについても、モバイル超音波画像診断装置を卵巣嚢腫や卵巣静止の診断に用いることが可能である。
  • 体表からの超音波検査では、宿糞や膀胱内の尿量、豚の体位により卵巣が描出されない場合がある。

具体的データ

表1.モバイル超音波画像診断装置による豚の妊娠診断

 

図1.モバイル超音波画像診断装置による豚の妊娠診断画像

 

図2.モバイル超音波画像診断装置による卵巣疾患の診断像

 

その他

  • 研究課題名:超音波診断装置による豚卵巣のモニタリング手法の開発
  • 課題ID:13-05-02-01-07-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:岩村祥吉、吉岡耕治、鈴木千恵
  • 発表論文等:1) 岩村ら (2001) J. Reprod. Dev. 47:j19-j26.
                       2) 岩村 (2003) 家畜共済の診療指針II p123-125、全国農業共済協会.
                       3) 岩村 (2003) 畜産技術 581:2-4.