Salmonella Typhimurium DT104が保有する溶原化ファージの性状解析

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要約

Salmonella Typhimuriumファージ型DT104に共通して存在する溶原化ファージST104を分離し、その性状解析を実施した。ST104はP22ファージ に高い相同性を示した。ファージ型別の手技は煩雑であることから、当該ファージはDT104のマーカーとして有用であると考えられた。

背景・ねらい

近年多剤耐性Salmonella Typhimurium(S.T)ファージ型DT104の分離が国内の家畜においても報告されている。そこで、本研究においてDT104の性状解明の一環として、同菌における溶原化ファージの検索を行い、分離されたファージについて、その性状解析を実施した。

成果の内容・特徴

  • DT104 12株、およびDT104とパルスフィールド電気泳動法を用いた型別により同一遺伝子型を示す株5株(ファージ型未同定)およびそれと異なった遺伝子型を 示すS.T 26株を含む計42株について、マイトマイシンC処理による溶原化ファージの誘導を試みた。このうち34株から、指示菌として用いたLT2株を溶菌する ファージを分離した。
  • 分離されたファージからそのゲノムDNA精製し、制限酵素EcoRIによる消化実験を実施したところ、5種類のパターン(a1, a2, b, c,d)が検出された(図1)。
  • DT104およびそれと同一の遺伝子型を示す株17株から分離されたファージの切断パターンは同一のパターン(a1)を示し、このファージをST104と命名した。
  • ST104のゲノムはXbaI断片(485 kb)上に位置していた(図略)。
  • ST104の全ゲノムDNAのシークエンスを実施した。ST104は41,391 bpからなり、64個のオープンリーディングフレーム(ORF)が検出され、このうち27個がアミノ酸配列レベルにおいてP22ファージのものと90%以上の相同性を示した(図2)。
  • ST104のゲノムはサルモネラや大腸菌由来の少なくとも8種のlambdoidファージ(P22、ST64T、933W、HK620、HK022、HK97、VT2-Sa、PS119)とホモロジーを示すORFが含まれ、いわゆるモザイク構造を示した(図2)。

成果の活用面・留意点

  • DT104が共通に保有する溶原化ファージの存在が明らかとなり、当該ファージはDT104のマーカーとして有用である。
  • ST104ゲノムDNAの塩基配列を利用して、DT104のPCRによる簡易スクリーニング法の開発が可能と考えられる。

具体的データ

図1 溶原化ファージの制限酵素EcoRIによる切断パターン

 

図2 ST104ゲノムのマップ

 

その他

  • 研究課題名:牛由来サルモネラにおける病原性関連遺伝子についての解析
  • 課題ID:13-02-03-01-12-03
  • 予算区分:委託プロ/BSE・人獣(ZCP-06)
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:内田郁夫、西森敬、西森知子、菅野徹、田中聖、石原涼子、鮫島俊哉、秋庭正人、中澤宗生、横溝祐一
  • 発表論文等:Tanaka et al. (2004) J. Clin. Microbiol. 42:1807-1812.